第94章 創傷(そうしょう)
10月3日(外では10月5日)
憔悴し切っている
身体では無く…
心が…
魂が……
削られ続けるそれを、再生させる力が…ほぼほぼ無いに等しい状態となっていた
その日はゆっくり休ませてもらうこととなった
しかし…
アルとディが通信機を奪って掛けてきたらしく…
要件を全て答えた後
ゆっくりと時間を取ることとした
ただでさえ葛藤を打ち明けない性格だから…色々と抱え込み勝ちなのだろうと、ケイトのことを心配していた
現に…
ケイトは、こんなことになるまで
たったの一度とすらも弱音すら吐かず
突然絶命する瞬間まで、懸命に、必死に抗って
倒れ伏すまで、ずっと変わらず、笑って…大事にしてくれた
何度でも…手を差し伸ばして……満面の笑みで…なんの辛さも、痛みも、苦しみも、まるで無いとでも言わんがばかりに………
子供は…
こっちのことなんて気にしないで
のびのび…自由に、生きて…笑ってりゃいいんだよ
ただただ幸せを望んでくれていた
心より願って、その為に邁進してくれた
何度も目を配り、目を向け…面倒くさがることも無かった
度重なる痛みも、苦しみも、辛さも…悲しみも……
こんなのなんでもない
そのケイトの言葉に
みんなが消えることに比べたら…
そんな言葉が透けて見えた
言われずともわかっていた…察していた……
君がそんな人だということぐらいは……
でも…しかし……出来ることなら…早い内に、不調を感じた瞬間に、伝えて欲しかった
そうすればすぐにでも対処できたのに
力になれて、少しでも状況をよくできたかもしれないのに
そう思えてならない
何より…信頼されていないようで、逆に傷付いた
頼りにされてもいない
いつまで経っても守る対象でしか無いのかとも思った
それを伝えると頭を振って、『違う!そんな意図は欠片も…ごめんなさい!』と頭を下げてこられた
次からは…やめてくれ
こんなことは、二度と…
寿命が縮む
心臓が止まりそうになるぐらい…辛かった
君が辛いと…僕も辛い
そう伝えると、何度も頷き
わかった、ごめん
気を付ける
と涙を目に滲ませながら額を布団へ擦り付けた
終いには泣いていた…
誰かが苦しむくらいなら
自分一人が苦しめば…
そう考えていた
そんなこと、あり得ないのに
と…