第94章 創傷(そうしょう)
ボコボコ「わかった…
なら…
ゆっくり休んで……
成体にはなったばかりだから
まだ脆いの
もうすぐで終わるから
待っててね」
ケイト「ありが…とう」
うと
かくん
心臓が9月27日17:30に停止してから後
急に起こったことだった……
熱でうわ言を言っている状態に近い
ケイトが恐がるのも無理は無い
意識が無い内に、身体は勝手に動く
何かに支配されてか、勝手に…
その間に何が起きているのか、把握すらも出来ないのだから……
冷やすな
治す為に
菌を身体から追い出そうとしておる
その為の必要な措置
それが熱だ
傷付いた身体の修復には宿灘…
いや…彼女であっても不可能だ
それを保護し守るカサブタと言っとろうが
ぴー
無機質な音が響いた
今朝、新しく変えたばかりの首輪からの警告音だ
心肺停止状態に陥った場合にのみ音を発する
先程(20時28分)からずっと鳴り響いている
もう23時20分にもなる…
それまでなんとか堪えている中
欠損によるものでも無く、補修でも回復でも効かない為
地道に神の力でヒビ割れを抑え込んでゆく
縫って治す類のものでも無いらしい
亀裂が入った状態=正しい状態
という間違った認識に伴うものである為
認識を正す所かららしい
どうにも…魂の心が弱ると共に、再生が弱っていた
それに伴う異常、現象らしい
つまり…死に掛けているのは、魂でも霊体でも無く、その核である『魂の心』だと
原初の清浄神『ケイトは…
全ての世界を繋ぐ穴であると同時に
全てを繋ぐホールでもあるのです』
ケイトをそう形容する
蘇生はした…
が、まだまだ当面は安心出来ないとのこと
心に、もう生きていく気力が無くなっており
それが呼び起こしているのだろうと……
9月28日0:45
ケイト(ボコボコ)「所詮道具だ
本人の意志なんて
命や自我や記憶なんて
なんの価値も無いものとしか扱われはしない
それは…されている本人『達』が一番わかっている
だから心は疲弊し、削れ、死に絶えてゆく
――死へ向かって
それをなんとかして治そうとして、その結果起こったのがあの事象だ
白いボコボコ、泡の膜は……己が身を守る防具であると同時に、心の欠損を補おうとする際に生じる…――言わば、最後の砦なのだ