第89章 堆魂の儀(ついこんのぎ)
守れなくてごめんね――
そう、精霊は返した
滅多に無い頼みだった
ケイトは基本、自分のことは自分でやる
人を頼るのは、本当に本当にどうにもならない時だけ
それも――何年経っても頼ってこないことの方が多い
ので――本気で、全力で頑張っていた
だと言うのに――奪われた
その生(命)も、未来も、希望も、何もかもを―――永遠に――――
だが…ケイトは精霊を温かく受け止め、静かに抱いて――微笑みをたえて
ありがとう、と言の葉を返した。
全力を尽くしてくれた…
大事にする為に…お互いが、同じ目的の為に――
それが、何よりも嬉しかったのだと…そう返し、笑った
通じ合えた、一丸となれた、全力を尽くせた
これ以上無い程に頑張れた…
何をどうやっても覆せないものなのだと、理解出来る程に―――
そのお蔭で、前に進めた
そう伝記にも残されている―――
それは――哀しみではなく、死との向き合い方、乗り越え方として載せられている
人は必ず死ぬ…
だから……大事に生きる――
人も…自分も…大事にする……
その想いは…変わらず、そこに在った
遺った赤い布(5317ページ参照)を、大事そうに世界樹に括り付けていた
当初はマフラーのように首に巻いていた
しかし…所々千切れてきた為これ以上摩耗させない為に、といった目的もあって、大事に墓に収めることに決めた
だが…それを拒まれた
墓を開けようとしたら何度も何度も邪魔され妨害が入った
「入れるなってこと?」とケイトが尋ねると、風が強く吹いて光が強く瞬いた
「そう!!!」とでも言うように
いつか必要になる…そう理解してのものだったのだろう
そうして――世界樹に巻いて守るようお願いしていたとのことだ
で…形見である十字架がお腹の子に移行すると理解した後…再び手にしようと
今――今日の今日まで守り続けてくれていたそれを受け取りに行っていた
それから槌を手に取って、マナメタルを赤い布に同化させることでマナメタル製にして、首に巻いた…
それが朝…返ってきた魔石、それを受けて三大迷宮クリアフルコンプリート8000万魔石、僕達の人数分更に発生、委託された魔石売買をする為にラキア王国へ
その道中、朝に僕達に教えて赤い布を引き取り、昼にフォボスの墓に寄ったという訳だ