第89章 堆魂の儀(ついこんのぎ)
死なせない!
たとえそれが―定められた道筋(さだめ)なのだとしても!!
諦めない――!!!死ぬ最期の瞬間まで!!!!
無駄になんかはさせない!!!!!―――絶対に!!!!!!!!!!!
己の全てを毎日毎日毎日毎日毎日
一日として欠かさず、全く同じ鉄を打ち続けた
ずっと介護に勤しむ、頑張り続ける義兄に負けないように――
共に打ち勝つ為に―――
そして――証拠映像が遺せた
肝心の想いも、中身も、全てを残し、記録する
その媒体が―――
それによって、動かぬ証拠となり、義兄の想いも知れ、当時の癌小人族の中身(本質、本性)も知れ、見切りを付ける助けにもなった
【響く十二時のお告げ】――その、変身魔法の解呪式も…
何の変哲もないただの鉄…
それが…効果を発揮する程に――
ただ…どうにも取り上げられそうな気もしたので、通夜で共に寝ている際(5184ページ参照)義兄のチョーカーに精霊を付けて守らせ記録を頼んでいた
最小限の傷のみで済んでいた…その上で死んだ
戦えない状況下においてもなお
そうなってでも皆を守り、皆から守られる中でも…
死に至る程に凄まじかった――
精霊も出来ることは全てやった…その上での死であった――各々、生を全うしたと言える
していないのは――奪った側(癌小人族)のみだった
手渡された槌で、初めて打った最初の作品…
それが、お守りだった
帰ってきてよかったと、切に想う
穢されたまま身に付け、悪用され続けていたらどうなっていたことか――
考えるだけでゾッとする
物を作る度に所有者固定機能を付ける発端となるのも頷ける←5206ページ参照
『ケイト直々に不眠不休で呪(しゅ、持ち主を守る白呪術)を込めて作ったお守り』
それは外側の布、手編みされたものであり…
一番時間を費やされたのは、その中にある鉄だった
外側の布は、中身の『聖域を張って所有者の身を守り記録を残す鉄』を保護する役割を持っている
それは『神鉄(聖域の盾)』と呼ばれ、『聖域の源』となるものとして、親しみを込められて、『愛』と名付けられていた――
『同じ想いを込めて、約一年も掛けて毎日欠かさず打たれ続けたからこそ』――
その製法は、後世に渡るまで続いており…『皆を守り、寄り添い、大事にした』とされている―――