第87章 神化(しんか)
だから――だからこそ―――原初の始祖神として選ばれた
いや――原初の始祖神の魂なのだろう、隔世遺伝の
1兆5000億年周期で生まれてくる――「災い(癌による全消滅)」に対抗する為の、『全ての実在化を司る存在』
「災い」と違う点は…ただ、ひとつ――『人を見る心』を、放棄しないこと
中でも、『人の想い』を蔑ろにしないことだ、『大事にしようとしてくれる心、寄り添ってくれる思い遣り』を――
だが――だからこそ―――全ての自由を奪われるという結果に至る
他の誰かでは耐えられない
そもそもが、全く影響も与えずに実在化が続くようにだなんて高尚な祈りや思い遣りは出来ない
己よりも他、己よりも全、そこに己は決して含めない、言うなれば自己犠牲、他者を何よりも重んじる心
だからこそ…尚更愛おしい、と同時に痛い
代わりにはなれない、誰も…寿命から異なるから――
そんな存在だからこそ無限の寿命がある
だからこそ進んで俺に出来ることならと犠牲になれる
だからこそ―――全ての実在化を司る存在となり、二重目の膜が与えられ、無作為に周囲へ実在化の力と自浄を与える、初代原初の始祖神以外のどこにも誰とも繋げられていない、まだ自由を奪われていない『2代目原初の始祖神』となった
初代原初の始祖神は行動に移した
本来ならば実在化出来ない世界――それぞれに、2代目原初の始祖神の分体となる写し身を作り、送った
最後のチャンスを与える為に
希望として――
侑子『しかしそれは…実在化を延長するということ。
彼女の負担を、今から増やすということ――
それが吉となるか凶となるか
それを決めるのは、ケイトではないわ。
人の行く末を定めるのはいつだって――それを犯した本人よ』
かくしてその結果は――今目の前にあるものが結果であり、現実である
後々、行く末は定められた――
この世は消すとして、これまで築き上げてきた全てが消えるかどうかは、その沙汰は、この世のもの達全員次第…
ケイト(2代目原初の始祖神)一人の独断で決まることでは無い
それぞれが、自分で呼んだ罰だ
自らの行く末を、消滅か、実在化か、定めるのは自分自身のみ
自らの行動が、心が、意思が、言動が、言葉が、己を定め、行く末さえも定める
そこに『人を見る心』があるかないかが分け目となる