第87章 神化(しんか)
全ての母体とされた(膜の内側に入った)その瞬間から、母体となり、二度と、これまで触れられていた人達と触れられなくなる、抱き締められなくなる、何かを共にすることすらも、全ての自由を奪われて――寿命が尽きるその瞬間まで、1兆5000億年が経過するまで、捕らわれ続ける
それが――原初の始祖神の役割
原初の始祖神として、果たしてきた役目
全ての実在化を司るという、唯一無二の――最も重要な職種
原初の始祖神以外の原初の神々とは、その実在化の手助けとして無くてはならない、切っても切り離せない最重要業務でもある
その膜から原初の始祖神が出た瞬間に、原初の始祖神以外の全てが消え去る
元々、実在化の力を送らなければ実在化出来ない存在なのだから…
だから……全ての自由を奪われて、閉じ込められて、何も出来ず、何かをするにも分体越しでなければ何も許されない…
といった事態となる
痛いなんてものじゃない…心も、魂も…削られ続けている身すらも、何でもないぐらいに……
そんな環境を、境遇を強いているのが…胎児である、原初の始祖神以外の全てだ――
だから決断するしか無かった、引き継ぐ以外に選択肢は無かった
だから自分を殺すことを選んだ
誰も望まないとしても――そうすることでしか、守れないから
ひとり、拳を強く握り締め、僅かに項垂れ、立ったまま、涙の一つも見せず、見えない涙を流し続ける
誰にも縋らないまま…困らせてしまうからと、自分を押し殺して…
弱音も吐かず、笑い掛けて嘘をつく、大丈夫だ^^と…
心配させたくないから…大事だから…こんなの何でも無いと……
その想いが積もりに積もって、募りに募って…堰が切れた
普通の人なら発狂して慟哭して泣き喚いて当たり散らして、今からでもせめてもの自由をと求めてやりたい放題にする所だろうが…
逆の行為ばかり取る
それが原初の始祖神だから
ひとりの勝手で、ひとりの好きにしていいものなんか、一つとしてない
何かしら理由があるからと言って、誰かを誰かの好きにすることを、正しいことだとは思わない
実在化している側だからと言って、実在化されている全てを、自分の好きにしていいだなんて思えない
その人達には、そのもの達には、意思がある、心がある、その自由を奪うことを、正義とは思えない…
たとえ――奪われることになっても
