第86章 紡ぎ
同じ存在が生まれること…
同じ魂が生まれることはある
刷り込みに過ぎない
癌へのいいイメージは
ただの思い込みだ…
自分の思い通りにするばかりで、人を厭(いと)わなくなれば…消えるぞ
人からの思い遣りの、一方的な搾取
我田引水
人の迷惑や負担を配慮せず、かえりみずに、好き勝手を続けた報い
それが消滅――
ウリエル「癌に対して、どのような反応をするか…
創世神の親殺しの魂=癌を吸い寄せる為のエサです」
『エサ!?』
ウリエル「ええ。生き餌です。
人の親切心を弄ぶ善人の面を被った悪魔
癌から遠ざかるのは善人のみ
浄化を拡げるもののみ
癌へと近付こうとするのは…創世神の親殺しの一派、癌一族のみ
不浄を拡げるもののみ
「けむたがらせて中にいるものを外へ追い出すこと」を、いぶり出しと言うでしょう?
癌に対して、けむたがって離れようとする行為を指す
そういった言動を取るか取らないか、逆に力になろうと自ら利用されに行って、死ぬまで搾取され続けるか
その前に気付いて離れるか、どうか…
それを試すことで、免疫性を付けつつ、反応を窺って、隠れ癌を誘き出すという寸法
癌の中でも、創世神の親殺しの中でも、神の位まで近付けるものも、既に神になったものも既にいる
それをいぶり出す為に必要な行為だからです。
だから…あなたが心を痛めることは無い…
涙を流す価値も、助けようとする価値も…痛む価値すらも…何も、無い
同情の余地は…一切無い
癌から距離を置こうとすれば、処刑を受けるべき癌では無い
それを見極める為にも、癌にもう一度チャンスを与えるという、この世は…
霊体という蓋を伴うと同時に、魂がどう在ろうとするかを試す、実験場ということ
必ず一定の周期で同じ魂が生まれる
その癌に染まるかどうかで、大罪人かどうかを判別しているのです
墨汁を敢えて落とすことで、それから逃げるか、逆に近付いていくか、その違い
それだけで見抜けるので
癌になるその時まで、ずっと居るかどうかで…
自らが
自らで自らにトドメを刺す、その日まで
あの日――創世神の親を殺した時に、そうしたように
その行為を――いぶり出しと言います
癌から利用されているだけと気付いてもなお癌へ好意を持ったものは癌です
気付いてから離れようと出来る人は違います」