第86章 紡ぎ
大好きになって、本当に良かった^^
そんな想いと一緒に次第に頬が熱くなり、涙を流した
絶え間なく流れ落ちていく涙に、私は思った
癌に奪われ続けたあの時間は…ケイト(私の英雄)と出会う為に、必要だったのだと
もっと修行をしたかった
自分の時間を作りたかった、大事にしたかった
大事にしてくれるロキ・ファミリアとの時間をもっと作りたかった、大事にしたいから
やりたいことが他にもいっぱいあった
でも…それを削ってでも、力になりたいと思った
信じていた、いい人だって……
感じた『白』に、癒やされていたから
でも……違った
そんな優しさを、癌は平気な顔で利用して、時間ごと奪って、何も悪いことはしていないと笑ってくる、与えようとする優しさに笑って当然のように奪い取るだけで何も渡しはしない、何を渡したとしても……癌は、自らを削ってまで私へ与えようとは、絶対にしない――
拷問のような時間だった
信頼を試して、愛情を利用して、好印象を植え付けて、ただただ削られて奪われてゆくだけ
そんな日々なのに、好印象と相まって『白』という癒やしを与えられた気になって、ロキ・ファミリアの方がたくさん与えてくれたのに、それよりも優先してしまった心苦しさもあった
癌は私が教えた力を好きに使って、自分を満たす為に巻き込んで無責任に振り回すだけ…壊して回って…人に被せて…着せて…やりたい放題…笑って、悪いことなんてしていないと……そんな癌に、私は責任を感じていた…私のせいで、と負い目を抱くようになった…それは日に日に増す一方だった
それでも癌は考えてはくれない、一緒になって悩んではくれない、寄り添ってもくれない、だから気付かない
私にとって、私と癌の間には――疎外感しかなかった
普段は無視しておいて、都合のいい時ばかり利用してくるだけの存在でしかなかった
そんな癌から、惚れているだなんて言われても困る
私は癌が嫌い
気持ち悪い
そう思った
口に出してケイトが好きだとはっきり伝えた
惚れているとも
ケイトは誰よりも私を慮って、出来ることはないか?大丈夫か?と心配して歩み寄ってくれた
自分の時間を犠牲にして…自分のやりたいことを犠牲にして、削ってでも大事にしたい^^、と…温かな想いが、いつも伝わってきていた
それがとても心地よかった
ありがとう…守ってくれて
大好きだよ^^
