第86章 紡ぎ
癌は、守りたいと思ったものの為には走るのに、私達の為には絶対に走らない
いつも除け者にしておきながら、自分の都合の良い時だけ擦り寄って、たかるだけたかって、奪うだけ奪って、大事にしている気でいる
疎外感しか無かった
見てさえもいない
私達の想いを
考えることも!ぎゅううう!←拳を強く握る
私達がどれだけ走っても、どれだけ削っても、どれだけ大事にしても、どれだけ合わせても…大事にも、走ってさえも、見向きさえもしてくれない
最後にケイトと一緒に修行を付けてから…←871ページ参照
私は、癌に修行を付けることを二度としなくなった
関わることも拒絶した
私は…私達は…
削ってまで大事にしようとした
奪われるだけだった
癌は
削ろうとさえしなかった
自分のやりたいことだけ
強くなることだけ
自分を満たすことだけ
君は…私の心なんて、毛ほども考えてはくれなかったね
歩み寄っても、見てさえも、くれなかったね…
私の想いも…気持ちも…何一つさえも……
君が見てるのは――いつでも自分だけだったね
寂しかった…辛かった…痛かった…
ジュクジュクと、傷口が熱く、痛く、鈍く響く
忘れないよ――
与えられた痛みも、傷も…きっと……ケイトに惚れるのに、必要なことだったから
そう、思うから……
癌は、人間として最低だった
薄々、違和感を感じていた
だから…これで……良かったと思う
今が…一番、とっても幸せだから^^
私は…力になりたいという想いを利用された
搾取され続けた
蔑ろにされて…痛くて、辛くて…誰も怒ったりなんかしなくて…
それでも平気な顔で続けられて…私の感覚がおかしいんだと騙された
でも…今はもう、違う
私の為に、守ってくれる人が、怒ってくれる人が、すぐ…隣に居てくれる
そんな酷い人から、守ろうとしてくれる、大事にしてくれる人が…
それが…私にとっての、何よりも大事な宝物
最も…愛おしい存在……――
だから…私も、守りたいの
怒って、守ってくれたように
大事にしたいから――
お母さんも言ってた
アリア『あれほど…情の深い人間はいない
ああいう人こそ、大事にしなさい
必ず、大事にしてくれるから
動いてくれるから
あなたにとっていいように、幸せなように、と…
絶対に無視なんてしないから』
私も――そう思う