第86章 紡ぎ
距離が開くと言うより、吹き飛ばされたと同時に
間髪入れずに、着地と共に繰り出そうとされた必殺技
低く低く轟く地鳴りと共に、それは不意に爆発を遂げる
ケイト「ウー!!!
ドン!!!」
僅か一瞬
一瞬で5mもの距離を飛び詰める
間近に迫るそれは、瞬間移動の如く速さで
アイズはその拳に、拳を重ねた
競り負ける
そう判断すると同時に、一歩踏み込んで軌道をずらし、
ケイトの額に迫った
それに対し、ケイトは咄嗟に…
左拳をアイズには当てずにその場で右回転し、
その勢いのままに、左拳を右手で包み込み、左拳の火力を右肘へと移行
アイズが迎撃しようとする最中、
同時に背を後ろに倒して背面から迫る左拳を避け、懐に潜り込みながら右肘打ちをアイズの顎へ繰り出した
アイズ「っ!!」
ばたっ
脳を揺らされ、衝撃を殺し切れず、後ろに仰け反り、仰向けにアイズは倒れ伏す
ケイトが再び出した神器の剣先を、アイズは喉元に突き付けられた
息は荒れ、肩で息をするケイトに
アイズは、負けましたと声を掛けた
その言葉に気が抜けたのか、ケイトはその場で尻餅をついた
互いに向き合う体制のまま、アイズは座り直して呟いた
アイズ「………ずうううん
負けちゃった…」
がっくりと項垂れるアイズに、
ケイトは膝を抱え込み、きっぱりと言い切った
ケイト「いや…かなり際どかったし
強くなり過ぎだよ…
最初の頃を思い出すね」
アイズ「え?」
ケイト「最初に…
私を見つけて、連れて行こうと、みんなと引き合わせてくれたのが…お前だ
感謝してる
お前と会えて、ぶつかり合えて、幸せだった^^」
アイズ「!」瞠目
ケイト「もしも癌の神に引き抜かれてたら…そう思うだけでゾッとする(ブルルッ!!)←震えながらも腕を抱え込んで擦る
お前は私の英雄だよ
なってくれて、ありがとう^^」
アイズ「!!!(瞠目)
(じわっ)←涙が浮かぶ中、堪えるように、きゅっと唇を嚙み締める
……(くす)
ううん
…私の方こそ…ありがとう^^
大好き」微笑涙目
ちゅっ
ケイト「!!
…」瞑目
抱き締め合い、抱擁し合い、唇を重ねる
互いに、今という時を噛み締めるように…静かに穏やかな、愛おしい、温かな時間は過ぎていった
緩やかに…
遠い過去を置き去りにして
心を映すように…晴れ間が出た