第82章 光芒(こうぼう)
正能「あちらでございます」
そう指差す先に居る馬を見て、突然震え出した
馬を見た途端、当主の顔色が見る見る変わった
当主「おおおおおおおお!
これはこれは…!!
なんという馬だ!!!
うむ…(ちらっ)←正能を横目で一度見る
お主には勿体ない馬だな!!
よし、買い取ろう!!言い値でよいぞ?」
どうやらお眼鏡にかなったようだ
正能「……おたくの蓮様を、下さい
お願いします
この通りです!!」ずさあっ!!
同様に、再びその場で土下座し、額を地面に擦り付けて頼み込んだ
当主「あ~!よいよい!!
あれが手に入るなら十二分に釣りが来る!!
お偉方の嫁に等やらんでも替えが効く!!
いや、それ以上の価値がある!!!
よいぞよいぞ!!立派ではないか!!!はっはっはっはっはっ!!!^^」
正能「財や家や土地は?」
当主「ああ、いらんいらん!
はした金にもならん!一銭の得にもならん!!」
正能「……(震)
(あいつの価値が…馬以下だと?
鎌倉時代からの先祖代々の財よりも土地よりも家よりも、蓮よりも馬だと!!?(憤怒)
その全てよりも蓮だろうに!!!!
(ぐぐぐっ!)
堪えろ…ここで破綻になったら終わりだ!
元の木阿弥と散る
そんなことは…あってはならない!!」ギリッ!!
折角ここまで漕ぎ着けたのだから、と無理やり怒りを呑み込む
見えないように、頭を下げたまま歯を食いしばる
当主「馬一つで良い!
何で育てた?」
正能「はっ!)
ええ←顔を下げたまま
あわやひえや山菜、肥料を与えた野菜のみです
あとは水で」
当主「それだけか!!?
真か―」
正能「はい、真でございます」
当主「そうか!ならばよい
貰い受けよう
いつまで頭を下げている?
起き上がって寄越せ」
正能「…はい」すくっ
当主「それでは、渡してもらおうか」
正能「はい
(すたすた)←馬の元へ歩み寄る
元気でな
大事にしてもらうんだぞ」なでなで
ぶるるっ←擦り寄る
当主「ええい!触るな!!」
ばっ!←強引に割って入り
当主「腑抜け根性が移る!!」
ぐいっ!←手綱を奪って自らの方へ引き寄せ
ぺっ←左の頬へ唾をかける
唾を左頬に吐き掛けられた
正能「…‥」震
当主「なんだ?
何か文句でもあるのか?」睨視
正能「いいえ…ございません」震←再び頭を下げる