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Unlimited【ダンまち】

第82章 光芒(こうぼう)





なのに…
あの人は、正能様は、必ず迎えに来ると言った

その日の内に来るとは、思いも寄らなかった


先文(さきぶみ)を、今日来ると、私の部屋から離れる時に出して
家の財も土地も権利書も家も何もかもを重要なもの全てを搔き集めて

馬と共に来てくれた

これは、侍従から聞いた話だが…本当に凄かったらしい


僕も――当時のことを、思い出した

あの世で見せてもらった、あの当時の光景を…
君の、必死な姿を―――


正能「お願いします
おたくの蓮さんを下さい!!」土下座
野山家当主「ならんならん!!
聞くにそなた、首も上げられぬではないか!高杉の落ち目だと聞き及んでおるぞ!」

正能(ぐっ!…ここでもか)歯噛みしつつも頭を深く下げ、額を畳に擦り付けたまま

当主「そんな所に等嫁にやって何になると言うのだ!!
一銭の得にもならぬではないか!!!」
当主の嫁「あなた…
話を聞くだけでも聞いてやればよいのでは?

掘り出し物が見つかるやもしれませんよ?」

当主「む…それもそうか

おほん
嫁にやるとしてだ、何を差し出せる?

釣り合えばやってやらんでもないぞ」

値踏みするような目が、高い場所で胡坐をかいたまま顎を撫でながら正能へ向けて無遠慮に刺す


正能「財を」
当主「む?いくらだ」
差し出された紙を見て

当主「要らん要らん、はした金に過ぎん」
正能「では家を」
当主「要らん」
正能「土地を」
当主「要らん要らん!←手で振り払う

もっとマシなものは無いのか?」

先祖代々語り継ぎ、守り続けてきたそれらが、一蹴にして払われてゆく


当主「無いのであればこれまでだな!」
これで話は終わり、とばかりに、やれやれと腰を上げて去ろうとする

正能「………馬を」

当主「ん?
何?」

正能「馬を…お渡し致します」

当主「馬か…

ふむ…
無いよりはマシか

よし、わかった
品次第だな!見せてもらおうか」

膝を打ち、立ち上がる
案内せよ、といった言葉に…立ち上がって歩かざるを得なかった


当主「釣り合うといいなあ?
はっはっはっ!^^」

その折、母上に連れられて一緒に来ていた

全てを一蹴される様も、それでもなお食い付こうとする所も…
その全てを、余す所なく…


嫁に欲しいという殿方が来たと、案内を受けて――その場に居合わせていた(正能は気付かなかった)


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