第72章 真相
理解しよう、仲良くなろう、歩み寄ろう、という道があるとして…
「その道を選ばず、拒絶や傷付けることを選んだ立場の人間」が、
その道を選び寄り添うことを選んだ立場の人間が「されていること」を得ようとする。
それはお門違いであり、土台無理な話だ。
どの面下げて、どの口で言うつもりなのだろうか…
ケイトは虐待に巻き込むまいと選んだ、いじめも同様に…
だから、頼ることを諦めた。
助けを求めるのをやめた。理解を得ようと訴えなくなった。
だが頼ることこそが、自分を大事にすることの一歩であり、課題の一つだった。
それを悪人だと言うのなら、
レイプされても虐待されてもいじめられても、誰からも助けられず聞いてもらえず、他から傷付けられ実の父から殺され掛け
される側の気持ちを考えてしまって、寄り添ってしまって、「不満も何も言えず当たれず暴れられない」。「それら」をするだけで手一杯。
という、ケイトが余裕の全くない窮状でもなお、人へ心を砕き「何十年以上してきたこと」を、実際にやってみて欲しいぐらいだ。
常人にこの生き地獄を耐えられるかは甚だ疑問だが。
ケイトは、感情がより豊かになることを、蘇ることを何よりも恐れていた。
悪夢を見た際フラッシュバックで暴走して、周りに与えないか、不安で仕方なかったようで泣いていた。
与える人になることを、窮状であれば与えてもよいとする人になることを、人だけでなくその心に傷を与えてしまうことを、何より恐れて、何より痛んで、涙していた。
それを僕は、抱き締めて宥めた。
「その時は話して欲しい、いつでも聞く」「今は、聞いてくれる人が沢山いるだろう?」「遠慮なくぶつけていいんだ」「ひとりじゃないよ」と微笑しながら言い聞かせ、
喜びと哀しみが入り交じった慟哭まで上げるケイトを慰め、寄り添って何度も何度も頭や背を撫で、やっと安心したようで泣き疲れたのもあってか爆睡していた。
話を戻すが、何をしようが、神様からすれば全てが折り込み済み。
人等は、神に敵わない。足元にも及ばない。
未来の本筋は決して揺るがない。
神ではなく人であれば、実現化にも限界がある。
実現化してはならない世界であり、魂であり、人だったということ。
ただそれだけの話、とのことだ。
あの世とこの世の仕組みは、このようにして解明された。