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Unlimited【ダンまち】

第72章 真相





答えはないんだよ――


不意に響いた声に、目を見開いた。

声のした方を見つめると、
フィンが、苦しげな表情で、笑みを浮かべながら、私を見つめていた。



私の慟哭へ、涙ながらの叫びへ、フィンはなおも、言葉を続けた。



フィン「答えはないんだ――

人が生まれる理由も、死ぬ理由も―
ほんの些細なことで、簡単に移ろい、変わって行くものだ―


君が――決められるものではないんだよ

どう在っても覆せない、理屈では叶わない、変えられないものだ」

ケイト「世界―そのもの」

フィン「ああ…

『世界』という、今後も繋がれ、紡がれ続けて行く物語だ」


悲嘆に暮れる私の心の叫びに、フィンは答えた。

だとしたら…
私は…皆は…それぞれの命は、世界を、続けて、繋いで、紡いで行く為の?



誰も殺さないで――

誰も死なないで――


力なき頃の、有無を言わさぬ蹂躙、サンドバッグ、

だからこそ想った…こうなってはいけないと
そして――


どんな人にも、そう在らない…
大事に出来る人になりたいと――

少なくとも――暴力や暴言を振るって、人もものも自由に壊す、他を蔑ろにする人間にはならないと



お母さんは、仕事よりも、私と姉を選んでくれた。

共にいる時間を多く作ってくれた。
実父のせいで、思い通りにいかなきゃヒステリックにもなっていた。

養育費や学費を全て払わせるんだと、それに付き合わされて、
警察に言っても、グルになって、子供のイタズラと済まされた…

でも…それごと、大好きなんだ。

私にとって、お母さんは…最後の希望で、砦だった……


姉は友達がいた、私は一人もいなかった。

巻き込むのが怖かった、
何より…それで傷付いたり、殴られたりなんてのが、嫌で嫌で、仕方なかった…

すっかり…私のせいでお母さんの件がトラウマになっていた…


実父は、思い通りに事を進ませる為なら何でもする、出来てしまう、
詰めの甘さなんて欠片もなく、抜けを見た試しも一度としてない…

たった一度、7歳の夏にレイプされたことも、その時中出しされたことも、お母さんにバレなかった。
当時、そんな知識もなかったことも相まって、証拠も残らないよう肛門にしていたから…



歩み寄ってくれる、理解しようとしてくれる、そんなお母さんの温もりがなければ――私は死んでいただろう


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