第72章 真相
運命の分岐点――
深く、濃い暗闇が、あたりを包み込んでいた。
不思議と不気味にも見える、感じる闇夜の中…
囲炉裏の中の火だけが私達2人を照らし、温かく包んでいた。
母上から、父上がお呼びだと聞いて、向かった。
こんな夜遅くに何事だろう?
と不思議に思ったことを、今でも鮮明に覚えている。
部屋の戸を開け、父上を見つけた時、
「座れ」と言われ、迷わず、部屋の入り口ではなく
藁で編まれた座布団に向かって歩き、正座した。
部屋の入り口から見て、父上は既に囲炉裏の左横に鎮座しており、
私から見て囲炉裏を右側に正座し、互いに向き合う中、
その話は、打ち明けるかのように、切り出された…
父上「よいか、竹若?
殺す相手は選べ。
殺すとして、食わぬのなら、その刃の先に何を見るか…よく考えよ。
我らは獰猛な動物ではない。
『思考できる頭』を持っている。
頭を働かせよ。
殺して、労せず過ごせると思うな。
殺したその時点で、染まった時点で…人として終わるのだ。
どうにもしようがない時ならばやむ無し。
だがそうでなければ…たとえ非情と言われようとも、貫く心構えは抱くべし。
何を以てしたか、その後に何を抱き、背に負い続けるか、それこそが重要であり、本懐なのだ。
わかるか?」
私「わかりません」きっぱり
父上「はっはっはっ!^^」
私「何分、私はまだ齢、十も生きておりません。
意味を把握するのもおぼつかない有り様でございます」頭を振る
父上「ふふふっ…
よい。
これだけは忘れてはならんぞ?」微笑
私「?」
ばぢっ!!←囲炉裏の薪が音を立てて弾ける
父上「…殺して意に介さず幾度となく繰り返すものは―最早、人に非ず。
繰り返し続けることに、気に病まんものは修羅に非ず。
鬼なり。邪なり。災厄なり。
それは修羅ですらなく、ただ己が理想の実現の為のみに猛威を振るう様は、『餓鬼』そのものよ。
よいか?
自分本位を、人の為、皆の為と置き換えるな。
邪なるものと決してなるな。
邪と共に歩んではならぬ。
歩んだその時には…貴様は、武士ですらない。
大事なものをなくした、人の尊厳を失った『屍』に過ぎぬ」
愉快そうに笑った表情から一転…
真剣な表情のまま、私へ話した。
だが私は…当時、意味が分からず、首を傾げるばかりだった。