【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
男たちが近づいてくる。膨れ上がった殺意が全身を貫き出久の足を地面に縫い止める。
心臓が早鐘を打つ。後ろ頭が雪に吹き付けられたように冷たくなる。
やばい。やばいやばいやばい。
殺される!
「悪ィな、ガキ。居合わせたのが運の尽きだと思って、おとなしく死にやがれ!!」
眼帯男の声高な死刑宣告とともに、ひゅるり、と残忍な音色を奏でながら鞭がしなった。陽光を受けた鉄鞭の先がぎらりと光り、毒蛇のような獰猛さで出久に襲いかかる。
「ひっ!」
咄嗟に身体を丸め、頭部をかばった出久の両腕に、無意識にワン・フォー・オールの力が漲っていく。けれど放つことはできない。狭い路地。そこでワン・フォー・オールの絶大な力を使うことの恐怖。目の前の男二人に向かうであろう甚大な被害。一般人の公道での個性使用禁止。個性をひた隠す出久が背負う、様々なしがらみが無意識下でその防衛本能を絡めとり、決断力を鈍らせた。
腕の中に溜まった力がすんでのところで踏みとどまる感覚に、出久は絶望する。何で。どうしてこんな時に。歯噛みする間に眼帯男の鞭が目の前まで迫る。鉛色の縄先が出久の頬にふれそうになる。
――その時だった。
突如、出久から見て右方向、ビルの壁に挟まれた路地の奥から、巨大な「何か」が弾丸のように飛び込んできた。明確な形も色も判別できないほどの凄まじいスピードで突っ込んできた「何か」は、出久に襲いかかろうとしていた男二人に横から激突し、ものすごい力で左方向へはね飛ばした。
「びぎゃっ!!」
「ぐべぇ!!」
あまりに突然の、一瞬の出来事に男たちは何一つ対応できず、どちらとも無様な悲鳴を上げきりもみしながら奥のビルの壁に叩きつけられた。狭い空間に猛スピードで巨大な物体が飛び込んできたので、結構な風圧が生まれ、元々腰が引けた体勢でいた出久はバランスを崩して尻から地面に転がった。