【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
芦戸は恥ずかしそうに頬をかいた。彼女の愛嬌たっぷりの笑みがクラスメート達に伝播し、その場の雰囲気が少し和やかになる。
そう、確かに、その金髪の少年は1-Aのクラスメート達に勝るとも劣らない立派な体格とは裏腹に、仕草が妙にあどけなく子どもじみていた。立ち振る舞いだけなら、7、8歳の子どもと言っても差し支えないくらいだ。芦戸が幼い子どもに対するような態度になってしまったのも無理はない。
「じゃあ俺、太陽と一緒に帰るから。ごめんな。せっかく誘ってもらったのに、つき合えなくて」
タイミングを見計らったようにそう切り出した翔を、止める者は誰もいなかった。彼を追いかけてきた少年を一人にしていくわけにはいかないだろう。皆「気にしないで!」「また今度一緒に行こうぜー」と口々に別れの言葉を言い、手を振る。翔は笑って手を振り返しながら、校門を出て右手の道を少年とともに去っていく。
その後ろ姿を、出久は見るともなく見ていた。ますます謎めいていく彼を、その秘密を、見つめれば暴けるとでも言うように、未練がましくその姿を目で追っていた。
翔は少年の背中を支えるように手を添え、顔を近づけながら何事かを話していた。小声にも関わらずその内容が鮮明に聞こえたのは、或いは必然だったのかも知れない。
翔と出久。彼らの運命が絡まり合う、その前兆として。
「太陽。今日はどうした? 何か用があって来たんだろ?」
「翔にぃ。あの、あのね、桜ねぇたちが……」
少年が今にも泣きそうな声でそう訴えた瞬間、翔の表情ががらりと変わっていくのを、出久は見た。愕然とした、顔の筋肉がすべて凍りついたような表情だ。
翔は歩速をはやめると、反対方向へ歩き出したクラスメート達と一気に距離をとった。そのまま雄英の隣に建つビルとビルの間、あるかないかの細い路地に、迷いなく滑り込んでいく。少年も押し込まれるような形ではあったが、翔の足取りにおとなしく従った。