第27章 epilogue
その頃には俺たちもいい歳になっていた
俺も手先が乾燥し始め、本をめくるのも少し難しい時が増えた
そんな俺を見てユイは濡らしたタオルを用意してくれた
ユイも髪を切り、ショートヘアにして歳相応のヘアスタイルになっていた
変わらずいつもニコニコしていて、笑うと目や頬に皺がみえるので、誰からも穏やかな婦人にみえただろう
驚くのはアズサだ
自分がタイムスリップしたのかと、アズサだけヴァンパイアなのではないかと思うほど彼の見た目はほとんど変わっていなかった
強いて言えば、行動や判断が少し遅くなったので心配になる時もあった
アズサは思いがけない最期を迎えた
いつも通りの朝、俺たちは食卓で朝食を食べていた
俺が食器を片付けていると、テラスの風がなびき、ユイが少し肌寒さを覚えた
秋の始まりだった
アズサはブランケットを出してきて、優しくユイの肩にかけてやる
何か2人でこそこそ話していたが、ユイがアズサの言葉に少し驚いた様子を見せたのを覚えている
それを質問する暇もなく、アズサは俺のところにやってきて、今日は秋に咲く薔薇の剪定をしようとゆっくり話し始めた
俺はそうだなと返事をして、アズサと2人で庭に出た
無神の屋敷ほどではないが、ここにもバラ園を作った
アズサは人間になってから、自分の体を傷つけるような事はしていない
手先の器用さをこうして剪定や物作りに活かして生きてきた
一番心配者だった彼の変化をみんな密かに喜んでいた
パチン パチン
バラの剪定をしながら、アズサが口を開く
「俺たちで...バラの剪定をするのも...そろそろ限界かな...」
もう70歳をすぎた自分達には広すぎる庭のため、管理も昔ほどはできなくなっていた
「俺もまだまだ元気なつもりだが、老いにはやはり勝てないな」
ルキも変わらず几帳面に家事をこなしているが、足腰の不安定さを否定できずにはいられなかった
「でも...ヴァンパイアだった頃の...俺たちは...こんな生活想像できなかったね」
あのまま自分達がヴァンパイアだったら...
俺たちはまだあの頃と変わらない容姿と力を持っていただろう
「ルキ....」
アズサは手を止め、空を見上げる