第26章 再始
紬の命により、広津によってマフィアの隠れ家に案内された谷崎、与謝野、宮沢の三名は、各々椅子に座って項垂れていた。
「如何かねマフィアの隠れ家の住み心地は?」
そんな三人に声を掛ける人物が一人。
現れたのはポートマフィア首領、森鷗外だった。
後ろには、先程別れた筈の太宰紬も居る。
「楽園の住み心地……とはいかないが一週間程度なら《猟犬》の目から隠れられる筈だよ」
「森医師。自爆して堕ちた国木田の安否は判らんのかい」
「残念乍ら」
その言葉に落ち込む三人。
「判ったのは太宰君の顛末くらいだが……」
注目が首領に集まる。
「太宰君は人質事件より前に《猟犬》に逮捕されていた。薬で眠らされて身柄を軍警から法務省 更に公安へと移されその先は杳として知れず だ。マフィアの情報網も届かぬ深部……相当善くない場所へ送られたのだろう」
「そうかい……」
森の言葉に与謝野が暗い顔をする。
「治のことは取り敢えず置いておいていいですよ。公安に引き渡されたとなれば、まだ命の保証はされているーーー君達と違ってね」
「確かにそうですね」
紬の言葉に納得の意を示す谷崎。
「それでは本題に戻ろう。このまま此処に留まるわけにはいかないからね。そこで此れからは全員バラバラに逃げてもらう」
「「!」」
森の言葉に驚く谷崎と賢治。そしてーー
「巫山戯ンじゃないよ!」
ガタッ
椅子を倒すほど勢いよく立ち上がって抗議の声をあげた与謝野。
それでも冷静な森は静かなトーンで続けた。
「……巫山戯てなどいないよ。探偵社員はバラバラに逃げてもらう。既に経路も手配済みだ。」
その言葉に納得がいかないのであろう。キッと森を睨み付ける与謝野。
「逃げて!その次は!?」
「次?次などないよ。潜伏地で君達は静かに暮らす」
ガッ!
ついに耐えきれなくなったのか森の胸ぐらを掴む与謝野。さすがに拙いと思ったのか、慌てて谷崎が立ち上がった。
少しの睨み合いの末、与謝野は直ぐに手を離した。
「……思った通りだ。アンタには探偵社を救う気なんて毛頭ない」
「何?」
「探偵社を救う条件は『社員 誰か一人の移籍』?嗤わせる。アンタの狙いはこの妾を手に入れることだけだろ!!」
「「!?」」
その言葉に谷崎と賢治も驚く。