第26章 再始
「……そうだが、それが何か?」
森はさも何でもないかのように続ける。
「だがね 与謝野君。福沢殿はその事も承知だ取引した。君に抗う権利など無いのだよ」
「社長がそんな事云う筈ない」
「……」
そう断言した与謝野に一瞬黙る森。
「いいや 『福沢殿は君を指名しても善い』と云った」
「!」
その言葉に絶望の色を顔に浮かべる与謝野。
その時だった。
「首領お取り込み中に失礼します。入り口にこの無線機が……」
とても善いタイミングで広津が不審な無線機を届けにやってきた。
『よう元気か親友?』
それと同時に声がする。その声の主はーーー
「!その声、フィッツジェラルド!?」
谷崎が一番に反応する。
『久しぶりだな。窮状を笑ってやりたい所だが時間がないので手短に話す。虎人の少年をそちらに向かわせた』
「虎人……!敦くんだ!生きてたンだ!」
喜ぶ谷崎と賢治。
「……少年が此処に来る理由は?」
冷静に話を続けるのは首領。
「取引だ 俺の為に治癒異能を使え 対価に探偵社復活の糸口となる情報をやる。集合場所は二十分後五番通りで……ではな」
「待て お前は何故この隠れ家の場所を知ってーー」
プツーーーー
伝えることを伝え終わった無線はそこから何の音も発さなかった。
探偵社復活の糸口ですって」
「うん。これで希望がーー」
「……………………妙だね」
谷崎と賢治が喜ぶなか、険しい顔をして森が呟く。
「妙……?」
「ああ。如何やって奴はこの秘密の隠れ家を発見した?」
「?そりゃきっと例の《神の目》とやらで……」
「そこだよ」
森は指を立てて説明を始める。
「この隠れ家が判ったのなら探偵社などより軍警と取引すべきだろう。弱った探偵社より強大な《猟犬》に恩を売った方が利益が大きい」
つい先ほどまで喜んでいた谷崎達の表情が曇る。
「私の知るフィッツジェラルドは強い側 勝ちそうな側に味方する男だ。この取引ーー罠じゃないかね?」
「「「…。」」」
黙り混む三人。
そんな彼等を見て、森と広津は静かにその場から離席したのだった。
一人残った紬は溜息を着いた。
その音を拾ったのか、3人の注目が紬に集まる。