第25章 一息
紬の部屋に中也は来ていた。
ソファにゴロンとしている紬に近寄りながら中也は頭を下げた。
「悪かったッて。頭に血が上ってた」
「別に謝らなくても良いよ。中也なら戦わずには居られない事は判っていた。だから好きにしていいと云ったでしょ」
「じゃあ、」
寝転がっている紬に覆い被さる中也。
「何でそんなに不機嫌なんだよ」
「……。」
紬の頬に手を当てて、少し呆れた声で。
けれど、優しく問いかける中也に、紬は無言を返す。
「手前の悩みとすりゃあ、あの放浪者の事だろうけど」
「……解っているなら訊かないでよ。頭が痛い」
そう云うと、紬はスリ、と中也の手に頬を寄せた。
中也はため息をつくと、体勢を変えてソファに座り、紬を膝枕し、頭を撫でてやる。
「今、どんな状況だ?」
本の中に居たため、状況整理から始めることにした中也。
「取り敢えず、森さん達に掛けられた異能は問題なく解除され、「魔人」は異能特務課に引き渡した」
「一先ず、方はついたッてとこか」
「一先ずは、ね」
「……何が起こる」
含みのある返しをする紬に、中也は声のトーンを僅かに下げて問うた。
「……まだ判らない、が。狙われているのは探偵社か我々だ。何方を利用してこの街を破壊しに掛かるか……」
「……詰まりは、まだ終わってねえって事だな」
中也の言葉にコクリと頷く紬。
「異能特務課から脱走でもする心算か?」
「否、それは考えられない。彼奴の危険さを考慮すれば、行き先は1つ」
「分かっているなら話は早ェじゃねぇか」
「そう簡単な話じゃない。彼奴の移送先は、欧州に在るとされる異能刑務所「ムルソー」だ。日本ならまだしも欧州上層部しか知らないとされる国家機密を暴くとなれば流石の私でも骨が折れる」
紬が上半身を起こし、中也の隣に座る姿勢を取る。
そして、頭を中也の肩に預けるように寄り掛かった。
「そうなると、どうするのが手っ取り早いか判るかい?」
「そりゃあ、彼奴同様に態と捕まりゃあ移送され……」
そう言いかけて、言葉を詰まらせる中也。
不機嫌な紬。
「真逆……」
嫌な予感が、頭を過る。
「そう。態と捕まる心算なのだよ、治は」