第23章 始動
今度はスッと、音を立てずに扉が開いた
「あの……だ 太宰様?」
太宰は部屋の入口を見やる。這入ってきたのは先程の看護師だ。
「私……先程は大変失礼を……」
モジモジしながら、顔を赤らめていう看護師を紬はまたもや詰まらなそうな顔でちらりと見る。
「あァ……お姉さん通話の許可を有り難う」
「えぇ……そのもし宜しければ先程のをもう一度……今度は個室で」
「気が向いたらね」
太宰も面倒なのか。看護師の顔を見ないで告げた。
その時、紬が何かに気付く。
「治」
太宰は、紬が指を差す方ーーー窓の外にいつの間にか立っていた猫を見やった。
猫ーーー煮干し……?
そう考えていると、再び看護師のピッチからナースコールがなされ、看護師は慌てて部屋を出ていったのであった。
それを見送ることなく太宰は窓を開け、猫に触れようとする。
「「!」」
猫はそれをスルリと躱し、煮干しだけ置いて去っていったのだった。
その煮干しを手に取る太宰。
「猫が煮干しを『食べずに咥えている』なんて可笑しいねぇ」
「詰まりはーーーそう云う事だろう」
太宰は手のひらに乗せた煮干しを慎重に崩した。
中から出てきたのはマイクロSDカードーーー。
それを見て、太宰と紬は笑い合った。
「治は情報確認しておいて。私は退院手続きをしてくるよ」
「今後もお世話になることがあるかもしれないんだから優しくお願いするよ?」
「努力する」
紬はそう云うと病室を後にする。
残された太宰は、自身の通信端末にカードを挿入し、データを確認した。
凡てを閲覧し、口元に手を当てて、フム、と呟いたときに紬が戻ってきた。
「おや、早かったね」
「笑顔でお願いしたら速攻で退院許可証を書いてくれたよ」
ニコニコする紬に、何をしたのか不安になりつつも、太宰は着替えながら中に入っていた情報を紬に共有した。
「………そうなると、此方側からは芥川君が適任か」
「だね。うちは敦くんを」
二人して部屋を出る。
「で、治は何方にする?」
「私は二人の面倒を見たほうが良いと思うのだよねえ」
「判った。其方は任せよう」
そう云うと、二人して通信端末を取り出した。