第23章 始動
其々が通信端末を操作し始める。
太宰は、
『もしもし、太宰か』
「やァ、国木田君。早速なんだけどウイルスの異能者の情報を手に入れた」
『何!?』
「時間が惜しい。向こうで説明するから敦君と今から指定する場所に来て欲しい」
『了解した、が。太宰、怪我の具合は』
「大丈夫だよ、今の所はね」
『そうか』
そう云うと通信が途切れた。
紬は、
『はい、樋口です』
「やァ、樋口君。早速で悪いんだけど黒蜥蜴全員を招集して呉れ給え。敵の潜窟が判った。今から応戦する」
『はっ』
「それと芥川君に代わってくれるかい?」
『は、はい…』
そばに居るのだろう。樋口は慌てた様子で端末を芥川に渡したようだ。
『此方、芥川』
「芥川君、私だ。時間がないから単刀直入に聞こう。治の指揮の元、敵対組織の人間、君と因果関係のある人物と共に任務を遂行する気はあるかい?」
『!?』
芥川の息を呑む音が聞こえる。そして、少しの間しか開けずに返事は返ってきた。
『是』
「宜しい。今から指定する場所へ君一人で向かい給え。そこに治がいるーー良いかい。失敗は絶対に赦されない」
『承知』
此方も短い返事ととも通信が途切れる。
病院前の駐車場。
紬が軽く手を挙げると、黒塗りの高級車がスイッと現れた。
運転席から黒服が降車する。
「彼を目的地まで送り届け給え」
紬の命令に短く応えると、黒服は車の後方扉を開けた。
「「ーーーまた後でね」」
紬は、太宰を乗せた車が見えなくなるまで見送る。
そして、またもやスッと手を挙げた。
ブロロロロ…、と音を立ててもう一台の高級車が紬の前で停車する。
黒服が降りてくる前に素早く乗り込む紬。
「警備会社「マナセット・セキュリティ」まで」
紬の言葉に、黒服は短い返事をし、発車させた。
紬は通信端末を操作し、何処かに電話を掛け始めた。
「突然のお電話失礼致します。私、『武装探偵社の太宰』と申します。至急の要件がありまして、社長にお繋ぎーーー」
車に乗せていた鞄から何かを取り出しながら、何時もと違う声音で、身分を偽り話し出した紬に若干の動揺を見せつつも、黒服は目的地へと急いだのだった。