第23章 始動
太宰の端末が着信を告げて、一時間後ーーー
ピピピッ
宣言通りの時刻に再び着信を告げた。
「はい」
『……。』
電話を掛けてきた相手が、答えない。太宰は首を傾げて、口を開いた。
「それで谷崎君。社長の行方は?」
その言葉でハッとしたのか。谷崎が慌てた様子で反応する。
『それが……総出で探しても手掛かりすら……』
「だろうね。社長は私達が到着し得ない場所を選んだ筈だ。居場所が判るとすれば嘗ての二人の関係者だが……」
太宰は紬の方を見やる。紬も太宰の云い示す、その人物に心当たりはあるが、現在の位置を特定することは叶わなかったため、肩を竦めてみせる。
「私に異能無効化が無ければ与謝野女医に治療して貰って一緒に捜すんだけどね」
太宰は窓の外をみて、呟くように、云った。
「こう云うとき……彼の人なら如何するかな」
『彼の人ッて?』
谷崎が質問した、その時だった。
ピシャッ、と物凄い勢いで扉が開いたかと思うと、
「太宰さん!手術後は絶対安静と云ったでしょう!それに院内は通話禁止です!」
流石に突然のことで、紬も少し驚きつつも看護師の方を見やる。
「えぇ?他の医師の許可は取ったし……それに人命の懸かった話ですよ?」
「規則は規則です!」
ズンズンと近づいて、パシッと通信端末を取り上げた看護師。
太宰の顔がムッとした表情に変わった。
「弟さんも弟さんですよ!お兄さんは絶対安静なのに、話相手にさせるなんて!」
「弟……」
太宰の呟きに、紬は小さく息を吐き、
声を低くして、笑顔を向けて云った。
「……それは失敬。如何せん、使命感に溢れた兄なのでね。通話も許可を得てると云っていたから見守っていたんですよ」
「もう間もなく面会時間も終了です!」
そう言い放つと、紬の腕を掴もうと手を伸ばした看護師ーーーの手を、太宰が突然、グイッと引き寄せた。