第23章 始動
紬の溜息に少し苦笑する太宰。
「社長の意に反してでも守りたいものがあるのだよ」
「ふーん。そう云う感情的な思考や行動は、私は理解しかねるけれど……中也に同じ事を許可してしまった時点で、此方側も充分に冷静な状態では無いのと一緒か」
「まあ、あのチビっ子は、人情や義理、忠誠を重んじるから、こうなるよねえ」
太宰の言葉に紬は自身の頭に手をやり、押さえ、再び溜息をつく。
「はぁ〜〜〜〜〜。頭痛い」
「止めなかった紬が悪いよ」
「この状況の打開よりも、あの瞬間、あの状態の中也を止める方が骨が折れそうだった、只それだけ。合理的な判断だよ」
「それもそうか」
紬の言葉に納得する太宰。
「取り敢えず、梶井さんの『檸檬花道』ーーー連続爆破の前では探偵社も一時撤退を余儀なくされる事でしょ」
「その間に、社長と森さん、両方を救う手立てーーー『共食い』の解除方法を探らなければ戦闘を繰り返してしまうね」
二人揃って腕を組み、右手を口元に当てて考え込む。
タイミングも考え事をするポーズも流石は双子。全く同じだった。
「ーーーとなると、」
「ーーー矢張り、ウイルスの異能者の割り出しが優先か」
暫く考え込む二人。
「探偵社の名探偵は中也と交戦中だろうし、他に割り出せそうな社員は居ないのかい?」
「居るとも。然し………」
「……治がそう云い切れる程の実力の持ち主なれば、既に狙われている可能性がある、か」
紬の言葉に、コクリと頷く太宰。
その時、先程と同じ着信音が部屋に鳴り響いた。
紬は、少し躊躇い、通信に応答した。
「ーーー如何しました、広津さん」
先ほどとは違い、慎重に電話に出ている紬。
『忙しいところ済まんね紬君。要件だけ端的に伝えると……首領が何方かへ行かれたようだ』
「首領が?…自らかい?」
『目撃者の証言によれば』
「……、そう。そうならば捜索は不要だ。本部の被害状況の把握と、戦闘要因は次の指示ですぐに動ける状態で待機し給え」
『承知した』
ピッ、と云う音と同時に長い長いため息を吐く紬。
そして、太宰に告げる。
「首領が動いた」
「!」
紬の言葉に、驚きの表情をする太宰。