第23章 始動
病院の中に入ると、紬は総合受付を通り過ぎ、迷いなく入院病棟へと向かっていた。
そして、目的の部屋に辿り着くと叩敲もせずに部屋に入る。
「!」
突然の訪問者に驚きつつも、すぐに笑顔になったのは、武装探偵社所属の太宰治。
紬は何も云うことなくベッド脇にあった椅子に腰掛けた。それを見届けて、太宰は紬の肩口にポスッと頭を預ける。
「ごめんね」
「それは何に対する謝罪だい?」
「怪我をしたことと、これからの事」
「……。」
紬は少しだけ眉間にシワを寄せた。
そして、自身に預けられた頭を優しく撫でる。
「どうして代わってくれなかったんだい?私ならここまでの大怪我など負わずに済んだというのに」
「向こうの情報が不足している今、紬を魔人と二人きりで会わせる心算は無いよ」
「……。」
紬がそっと太宰の傷口に触れる。
「『人間失格』さえ無ければ痛みだけは取り除いてあげられるのに」
「ふふっ。そんなに心配せずとも私は大丈夫だよ」
「……嘘付き」
紬は軽く太宰の頭を叩いた。それを合図に太宰が顔を上げる。
その時だった。
紬の端末が着信を告げる。太宰と一瞬だけ目を合わせ、すぐに応答した。
「……なんだい?」
『太宰幹部!申し訳ありません、中原幹部との通信が途絶えました!』
「中也との…?」
『はい』
中也を足止めできる探偵社員となればーーーあの名探偵くらいか。
「本部の状況は?」
『探偵社の者が数名侵入、交戦中です!』
「そう……梶井君に『檸檬花道』の準備をするよう指示し給え」
『承知しました!中原幹部の方は如何致しましょうか』
「中也は放っておいていい。そう簡単に死にはしない。今は首領の死守を優先するんだ」
『承知しました』
プツッと切って紬はハァ、と溜息をこぼした。
「あの単細胞、絶対に勝てない相手に喧嘩売ったな」
「乱歩さんか。前線に出てるなんて探偵社の方も、よほど追い詰められているようだね」
ふむ、と太宰も紬の指示を聞いて、自身の同僚達の状況を整理しているようだ。
「それにしても探偵社が交戦してくるとはねぇ」
紬は、ハァと、本日何度目かわからない溜息をついた。