第6章 密かな淫行【橘真琴/R18】
空「え、全然怒ってないよ?…まさか真琴、さっきからそんなこと気にしてたの?」
先程から、話しかけてもハッとしたように顔を上げて『ごめん、何だって?』と聞き返すことが多かった。
私は知っている。大体彼がそんな風になるのは、何か思い詰めたことや、悩み事がある時だ。
それを、他人から知られないように笑顔を見せて悟らせないようにする。
真琴、気付いてる?
真琴がそうやって笑ってる時は、いつもの『人を安心させる笑顔』じゃなくて、『人を心配させる笑顔』になってるんだよ。
だから今日も、一目見て『何かある』と思った。
でも、彼は自分からは話そうとしない。
人に迷惑をかけてしまうと思っているから。
そんなこと、本当に気にしなくていいのに……
真琴「そんなこと……まぁ、『そんなこと』だよね。いや、さっきから空の返事が生返事だったから…怒ってるのかと」
そう言って再び苦笑する彼。
(あ…そうだったんだ。ちゃんと返してるつもりだったけど……さっきの真琴の将来像の断片が頭に残ってるのかも)
心配させてしまっていたのは、私の方だったみたいだ。とても申し訳ない…
空「そうだった?ごめん……ちょっと、真琴の将来像を考えてたんだ」
真琴「俺の将来像?」
彼はコテンと首を傾げて私の言葉を繰り返した。
空「うん。さっきの蓮くんや蘭ちゃんを諭してた姿が、なんだか教師に見えたからさ。似合ってるなぁ、って思って。でも、真琴は子供の扱いが上手いから、その点で言ったら保父さんとかもいけるんじゃないか、とかね」
頬杖をつきながら彼を見つめる。
皆を纏めることが上手くて、聞き上手でもある故に部長に任命された彼。
あまり表立って指揮をとることは普段しないけれど、任されたからにはしっかりやりきる人。
ある意味、『万能彼氏』だ。