第6章 密かな淫行【橘真琴/R18】
心地好い陽の注ぐ昼過ぎ。
今日私は、彼氏である真琴の家に遊びに来ていた。
家のチャイムを押した途端、真琴が迎えてくれると思いきや、彼の年の離れた弟妹である蓮くんと蘭ちゃんが私の元に笑顔で飛び込んで来た。
付き合う以前から通っているも同然の家なので、二人共甘えることに容赦が無い。
よろける体を踏ん張って二人を抱き留めていると、真琴が申し訳なさそうな顔をしながら外へ出て来た。
その時の彼は、眼鏡を掛けていた。
学校ではあまり見ない姿に、否が応にも胸が甘く締め付けられ、鼓動が早くなってしまう。
下の弟妹を諭している姿は、何だか教師に見えた。
彼は子供を相手にする事が上手いし、何より柔和で優しい笑顔が見る者を安心させる。
子供にもっと接する仕事なら、保父さんなんかもいいかもしれない……
家に走り帰る子供達の姿と、苦笑しながらこちらに謝る彼を見ながら、勝手にそんなことを考えてしまっていたので、反応が遅れてしまった。
心配そうに私の顔を覗き込む彼に気付いて慌てて笑顔を浮かべると、彼の手を引っ張って家の中へとお邪魔した。
それからは彼の部屋で様々な暇潰しをしたり、水泳部の話を聞いたりして過ごした。
その間に例の子供達は二人共友達の家に遊びに出掛けてしまったらしく、珍しく家の中が静かだった。
彼のお母さんが用意してくれたお菓子や飲み物を有難く頂きながら、刻々と過ぎる楽しい時間を満喫した。
真琴「………ねぇ、空」
夕方頃、まだ帰って来ていない子供たちの事を考えていると、彼が何処か遠慮がちに声を掛けてきた。
空「ん?どうしたの、真琴」
彼の方に顔を向けると、小首を傾げて彼を見る。
先程まで掛けていた眼鏡は、今は机の上に置かれている。
澄んだ翠色の瞳に見つめられながら、彼の言葉を待つ。
真琴「…さっきのこと、やっぱり怒ってる?」
こちらを窺うような視線と言葉にハテナマークが脳内を飛び交う。
怒る?一体何に……『さっきのこと』というと、蓮くんや蘭ちゃんが飛びついてきた事だろうか。
何故そんな事で怒らなければならないのだろう…?