第1章 プロローグ
「会えてよかっ—……。」
次の言葉を待った。しかし、零人は何も言わない。
痛みを堪え、腕を伸ばし零人の背中を小さく揺らす。
「ねえ。」
何も言わない。
「ねえ…。」
けれども結果は変わらない。
その時、頬に一すじの涙がこぼれた。
これでまた、一人、友が下科の前から消えた。
「ねえ!何か言ってよ……。お願い。……お願い…だから…。」
下科は零人の背中を激しく揺らす。そして、必死に名前を呼び続けた。
心では解っていた。もう、死んでいると。話かけられないこと。笑ってくれないこと。
だけど受け入れたくなかった。否、受け入れられない。
涙が次々に目から溢れ、下科の制服に染をつくる。
下科は、一人で泣きぐしゃになったあと冷たくなった零人の手を握り最期の時を待った。
一面真っ暗な所に居た。
空を飛んでいるような…。水中の中に居る様な…。