第15章 初心者夫婦、初心者親子。
「ダンゾウ様が尋ねられた後、誰もちゃんを尋ねなかったの?」
「へ?⋯⋯いや、確か父さんが、行っていた筈だよ」
それがどうかした?と聞けば目をまんまるくして眉間を寄せていた。
暫く唸り声を上げては考え込み、ふぅと長く息を吐いていた。じぃっと見つめていたのは俺だけではなかった、
飛翔は目パチリと開き静かにリンの言葉を待っていた。
「うーん⋯まずい、かな?」
「歯切れ悪いね」
「⋯⋯あのね、サクモさんは、結婚に賛成も反対もしていなかったんだよ。ちゃんの事こう言わなかった?幸せになれない子だって」
ドクンドクンと心臓が飛び跳ねてくる。
「サクモさんは、ずっと探していたの。ちゃんが幸せになれる場所、それは今ではなくて未来、死ぬ時、心安らかになれる場所。もう、泣かないで後悔しない場所」
「⋯それで」
「⋯⋯だから探し当てたんだよ、人狼の村を。」
「⋯をそこへ?」
「そう、そこは差別も偏見もないから。けれど、誤算はカカシとの子供、大きな誤算になったでしょうね、だから、この流れは絶ったと思ったんだけど⋯⋯サクモさんは、親馬鹿だからね」
「⋯なんでリンはそんな事を?」
にかっと微笑む。
「ちゃんが戦うって決めたからね、だからちゃんとカカシを応援するって私は決めたの。カカシ、ちゃんの病は簡単には治らないよ」
にこにこしながら飛翔の小さな鼻をつつく。
「ちゃんがまともな振りをしたいのは、貴方達を大切で大切で仕方ないから、頼られたいから、あの娘は愛されてるって分かってるから」
「あーうー?ん?」
リンの指を掴むとニコニコする。
「飛翔、ママに沢山大好きを伝えるのよ、沢山困らせていいの。貴方とカカシの事で頭がいっぱいになれば、また少し元気になれるから」
「リン⋯⋯」
「ちゃんとこの子はまた違うし、カカシとこの子もまた違うの、けれどね、皆愛し合ってるのは同じなのにね」
「知っているけど俺には言えないんだね」
悲しげに笑うリン。
うん⋯と呟くと俯いていた。