第15章 初心者夫婦、初心者親子。
私が飛翔を避けているのを知っているんだろう。
触れもしない事を知っている。
「いい、の、かなぁ?」
「いいか悪いかなんて、どうでもいいんです。あの子達には貴方の愛が必要です、私がそうだったように。お父さん、愛していますよ沢山沢山」
ぎゅうっと込められた腕の力。
は少し甘い香りがして涙が出た。
母親にさせられ混乱していた、合わせる顔がなかった、それでも、この子は強くなった。
強くなるしかなかったのかもしれない、けれど、それを自分の決断だと言う。
「私は、弱いままなのです、けれど、大切な人を守る為になら、沢山嘘をつきますよ。見破ってもサクモさんは知らぬふりをしてください、それだけで全部ちゃらですからね」
そんな事を言って許すチャンスを与えて、あぁ、もう、この子には叶わない。
大きくなったんだ。
そう実感してまた、涙が出た。
「ふふ、泣き虫ですね、旦那様に見せたいぐらいです」
「やだよ、絶対ね」
いつか、そんな事をばかり叶わぬことばかりを語っていた少女が大人になった事に気が付かされる程悲しく嬉しいと感じることはないと実感した。
は、飛翔が一歳になる少し前に家に戻ってきた。