第14章 懐かしさと。

　いつだって、不安だったのはカカシ様も同じだったのだ。
　きっと、だから、何度も何度も、愛を確かめて好きを確認していた。
　優しく手を握って、温もりを何度も確認して。
　言葉を信じられなくて。
　いつも、私を見ていた。
　いつか離れていくのではと、怯えていたのはカカシ様だった。
　「帰って⋯くだ、さい」
　「⋯⋯そうするよ」
　そろりと立ち上がる彼を見てぎゅっと手を握る。
　「⋯⋯もう、人狼を愛さなくて結構です」
　彼は驚き目を見開く。
　困ったように優しく眉を下げていた。
　「愛するだけなら勝手に出来るでしょ」
　ぽん、と頭に置かれた手が震えていたから、胸が締め付けられる。
　​「なら、離縁、してください」
　「その選択肢しかないのなら、人狼を愛さない方を選ぶかな」
　きっと、私もこんな風に愚かなんでしょう。
　愛する人を過ちに導き、イタチさんの言う通り逃げて被害者ヅラして、冷静な貴方が憤慨するほど私は愚かなのだ。
　「ごめんね」
　彼はそう言って部屋を出た。
　私は安堵感から流れた涙にただただすすり泣いていた。
　
　謝らせるばかり。
　
　過ちをさせるばかり。
　
　私といても貴方に何もいいことは無い。
　
　それでも、貴方は私と離れたくないと言ってくれるの？
　こんなどうしようもない、貴方を傷つけた私をまだ、愛してくれてるの？
　
　目を閉じたら苦しげに泣き笑い私を犯す貴方が思い出される。
　
　ねぇ、そんなに傷つけたのに、どうして⋯
　嫌いになって、くれないの？
　
　「どうして⋯私なんですか⋯っ！」
　「⋯」
　「私はっ」
　これ程までに貴方を傷つけた。
　イタチさんの言葉が思い出される。
　えぇ、自業自得。
　私は愛する人の不安と、愛からまた、逃げ出したのだから。
　何も言わず、貴方が恐れた事をした。
　「綱手、さま⋯⋯私、強く、ならなきゃ」
　強くなって。
　貴方の不安も抱き締められるように。
　貴方の悲しみを受け止められるように。
　もっと、嫌われることを恐れないように。
　「じゃないと⋯あの人と向き合えない⋯」
　
　私はもう私の幸せだけを願わない、貴方の幸せだけも願わない、逃げない。
　今度は全てを頂きに行く。