第12章 やっぱり。
ふと、風の香りに起き上がる。
「ん⋯ん、んぁ、いけない、起きなきゃ」
家の前で寝ていたらしい。
そう言えばリンちゃんに会って嬉しくて、慌てて起き上がる。
「あ、あれ?あれ?あれ?」
くるくると匂いをたどるが、リンちゃんの匂いはしない。
しゅんと、耳と尻尾を垂らすと、家の壁によっかかりながら眠る白髪に気がつく。
サクモ?
サクモによく似てる。
ぺろりと、手を舐めると驚いたのかパチリと目を開ける。
「どうしたの?お腹すいたの?」
「あー⋯そうだねぇ⋯」
「なら、中にサクモが居るわ!だから、ご飯くれると思うのですよ!」
「いや、お腹がすいてるわけじゃないんだよ」
「?なら何故こんなところに?」
は、警戒もせずただちょこんと、彼の隣に座る。
この人は寝ぼけているのか目を細めては擦っていた。大きな手は頭をかき、深くうなだれていた。ぺろりと、その手を舐める。
「お腹がすいているのですよ!」
綺麗な鼻筋。
サクモに似ているけど違う。
優しい声は似ていた。
人の見分けは難しい。
この人は匂いがあまりしない。
サクモは紙とインクのと埃の香りがする。監督者たちの匂いもあまりしない。
リンちゃんは外の沢山の色々な香りを纏っている。たまにいい香りもする。
この人は⋯何の匂いもしない。
「貴方は、疲れているのですね」
「疲れ⋯あぁ、そうかもしれない」
「なら、この場所で休むといいです、この場所はのためのお家です、だぁれも来ませんから、ね?」
時々、サクモが同じような顔をする。
だから、人は疲れている時、そういう顔をするんだろう。
手を伸ばされなでてもらえるんだと思い目を閉じる。
ちゅっと、口に温もりを感じ目を開ける。
「ふ!?」
ぱちくりとすると、ぬるりと、舌が口の中に入ってくる感覚に驚き後ずさる。
「!?!?な、なに!?」
「くくくっ、凄い後ずさり」
「な、なにをしたんですか!」
「なんだと思う?君は、そんなことも知らないんだろうね、ダンゾウ様は何も教えない幸せを与えになったんだからね。なら、俺が君をどうしても君は何も知らないで傷つかないのかな」
何を言っているのかよくわからなかった。