第12章 やっぱり。
文字さえ彼女は必要ないと、ダンゾウが言ったから、あの小説好きな彼女は⋯文さえ読めない。
仕事以外で外の人間との接触を禁じられている。大きな鎖で家に繋がれている。
どれだけ変わっても忘れても何をしても変わらない。
それは人狼だからではなくて⋯本当に本当に変われない。
この娘は気遣いばかりで、全力で人を愛する。
「リンちゃんまたすぐ会えるよ!サクモさんリンちゃん送ってきて!」
「はいはい、いい子にね」
「うん!リンちゃん」
ぺろりとリンの頬を舐める。
「しょっぱいの!」
「っ!⋯⋯⋯また、くるね!」
「うん!」
寂しげにする。
ちょこんと玄関先に座りながら目を閉じていた。
彼女の隣にダンゾウが見えて眉間を揉む。
間違いではない。
人の姿をして、ダンゾウに抱きついていたから。
その口は優しい言葉を並べていた。
これだけはずっと変われない、彼女は自分たちの前で人の姿にはならない。
ダンゾウの前だけ。
まるで、特別に愛されてるようで胸が焼かれるような苦しみがこみ上げた。
カカシが弱いわけじゃない、何故何度も上手くいかないの?サクモさん、は2人では幸せになれないから仕方ないと言っていた。
なら何が足りないの?
あんなにちゃんを思ってる、なのに何で怖いの?逃げるのか、それだけはわかる気がした。
とっても優しく彼女は、嫉妬を嫌悪し人への憎しみを捨てていた。
そんなことが出来たのは、片思いをしている間だけだった、徐々に胸に産まれた最も嫌いな感情、幸せな今と正反対なことを思い浮かべ耐えられなかった。
幸せのままでは生きられない、はそんなことも知らなかった。
だから、この幸せの終わりに恐怖心を抱きそれは計り知れないものだった。
「ちゃんは今を望んだんだね」
リンは悔しかった。
「でもね、カカシはきっと戦うと思うの、オビトも知ったらきっとカカシ以上に悔しがると思うんだ。だから、私は私のできることをします」
そう言うとサクモさんは微笑んでいた。