第12章 やっぱり。
大きな姿の獣は涙を流した。
大粒の涙をぼたぼたと。
金色の瞳が涙で揺れる。
「言ったでしょ、先に死なれるのは辛いって。」
「っ」
「だから、また、ダメなら俺から逝かせてくれる?そうしたら、を探しに行ける気がするんだ」
人間は我が儘。自分勝手。
でも、この人を好きになる度に。
出会う度に。
ほんの欠片。
幸せになってしまうんだ。
愛されなくても、そばに置いてもらうだけで、好かれなくても、一緒にいるだけで。
一緒の世界に生きることが、全てが愛おしいと。
貴方が何かを知っているのは解っていた。
けれど。
けれど貴方にこの、終わりの見えない旅をさせると?
これがどれだけ、苦しくて哀しくて虚しいか。
きっと、私が愛してきた貴方ではなくなってしまう。
そんな事を私が⋯
私がさせはしない。
「だめ、です」
「お前は優しいね、。俺はそれでも⋯今の俺は耐えられない。失う事が1人では抱えきれないんだよ」
去るばかりの私はそれはわからない。
サクモはとても、とても辛かったろう。
優しく暖かい人、そんな人を人はいとも簡単に追い詰めさせてしまう。なら、彼にこんな顔をさせているのは私で、そんな人間と同じなのだろうか。
「ずるいね、。お前は父さんを連れてきてくれた、けれど、俺を愛してくれてるお前と父さんはきっと簡単に消えていくんだろう?」
「⋯か、かし、さま」
胸が痛い。
太い針が胸に刺さっていくような痛み。
「二人共俺を少しも頼らず、独りで戦って、消えていくんでしょ?心配かけないため、迷惑かけないため、愛してくれているから。それがどれだけ、悲しく辛いか」
そろりと、前足が動く。
「愛だけ置いて去るなら、愛さないでくれた方が俺はいい」
違う。
そうじゃ、ない。
あれ、なんて言えばいいの?
なんて言えばいいの?
何が違うというの?
カカシ様は間違ったことは言っていない。
現に私は逃げたじゃない。
あの方の優しさから、愛から、置いて、去った。
自分勝手に、逃げた。
あの方の気持ちも考えないで。
「人が愛するのはほんの少しでも愛してほしいと望むからだよ、。俺は何度もお前を死なせて、でも、もうそうしたくないからね」
悲しげに笑うから。