第10章 狼と狐と。
はお茶を入れて徐ろにサクモの手を綺麗に拭いていた。その仕草を見つめながら、呟く。
「カカシはなんて?」
「いいえ、取り入った用事ではなかったようです」
「息子はにゾッコンだね」
「⋯そればかりは私には何も言えません」
「⋯なら、五年後にもう一度同じ事を聞くよ」
「私の答えは変わらないと思いますよ」
「それはどうだろうか」
拭き終わったのか、お茶をそっとテーブルに置く。
どこでこんな仕草を覚えたのかと、思いながらを見るが、戻って来たナルトとお昼ご飯の話をしていた。
何処ぞの息子も少しこの光景に嫉妬していたに違いない。
なんて思いながら頰杖をつきながら二人を眺めた。
「で、なんでおっちゃんがボロボロなんなだってばよ」
二人はアッという顔をする。
「そ、そそうです。どうなさったのですか?」
「仕事でね、ちょっと上手く行かなくてね、また行ってくるんだけど、その前に可愛い娘の顔を見たくてね」
「⋯!そんなに⋯過酷なのでしたらそんな悠長な事よりお休みになって下さい!」
「いやいや、ああ、こんなにボロボロなのはね、いや違うんだよ、僕のミスだから」
「ですが、そんな怪我なさって⋯待っていてくださいね」
そう言ってが席を立つと洗面所に消えた。
しんと静まる部屋。
ナルトはお水を飲みながらが座っていた席に座るとじーっと青い瞳をサクモに向けた。
「⋯俺さ、頭悪いのは解ってるってばよ、それでも、それでも⋯」
「うん、僕は怒らないから言っていいよ」
「本とかの人狼と、ねーちゃん何であんなにも違うんだってばよ」
サクモは驚いた。
図書館で置いてある書物は、人狼とはどう言う残酷な生き物か、どういうものがを記したものしか無いかは。
あんなに、違う。
それは、そんな書物から出るにしては少し可笑しい質問だった。
「クソジジィに渡された本⋯よく分かんなくてイルカ先生に教えてもらいながらだけど、読んだってばよ⋯」
「三代目様、かな?」
「うん、なんでなんだってばよ!人狼は⋯だって⋯」
サクモはうん、と深く頷く。
ナルトはぎゅうっと拳を握り、俯く。
「火影を護る一族なんだろ!」
その言葉に言葉を失う。
誰もが知るわけがない、知っているのは、火影と、人狼だけ。