第10章 狼と狐と。
カカシ様も、いつも、にこやかな顔をしていた。それは、顔だけでも表情だけでも。
だからなのか、私は人とはいつでもにこにこしているものだと思っていた。
「、ナルトくんの言う通りだと僕も思うよ」
「⋯⋯サクモ、さん⋯」
「もっと、感情を表に出すことも人の勉強だよ」
その言葉を聞いて、あぁ、私は、怖かったのだと解った。
ニコニコしている人が好きで私はそうではない人が苦手なのだと。だから、自分は自分が好きな方を選んだのだと。
「⋯⋯はい、サクモさん⋯」
今なら少しだけ、ほんの少しだけ、それが出来る気がした。
「⋯で?ねーちゃんこのおっさんと知り合いなのかよ」
「はい!私のお父様のような方です」
「ような、ひと?」
「ふふ、ナルト、人狼には監視するものが必要なのですよ、その方がサクモさんなのです」
「かん、し?するひと?このおっさんが!?ボロいのに!?」
ボロいは関係ないかなとサクモが突っ込むがナルトは指を指し驚いていた。
まじまじと、見つめねーちゃんは渡さないってばよ!!!と怒鳴る姿が愛らしい。
後ろから抱きしめて指をそっと下ろさせる。
「言ったでしょう?私の父様のようなものだと、サクモさんは私にとって大切な人なのです」
「⋯⋯嫌なことされたり?」
「してないですよ」
「ならいいってばよ。で、おっさんなんでボロボロなんだってばよ」
それでも、警戒心剥き出しのナルトの頭を撫でて手を洗っていらっしゃいと囁くとしぶしぶ洗面所に向かう。
「あぁ、本当にナルトくんはいい子だね」
「サクモさんもそう思いますか、とってもいい子ですよ」
の横顔は嬉しそうで、誇らしげだった。
「お茶を今出しますね」
「⋯⋯カカシが来ていたのかい?」
はピクリと目を見開き狼狽える。
「いいんだ、接近禁止命令自体はほとんど無いに等しいからね、カカシが、そうだね、どうにかしてきた、ようだよ」
「どうにか、?」
「あぁ、ナルトくんとのことは百歩譲って仕方ないと思ったんだろうね、けれど、それだけは百歩譲っても足りなかったようだから」
にやりと笑うのはカカシによく似ている。
は頬が赤くなるのを感じて手を頬に当てる。
「そ、そうだったのですか⋯」