第10章 狼と狐と。
「ただいまーーーー!ねぇーちゃん!!変なおっさん拾ったってばよ」
ナルトの声にハッとする。
ああ、カカシ様はいつも私をからかう。
今度のあの人は私の知っていたあの人とは違いすぎた。
反応に⋯困る。
ふと、ナルトの発言を思い出す。
「おかえりなさいませ⋯えっ!?そんなもの拾って来ては⋯」
ナルトが連れていたのはサクモさん。
何故か究極やつれている。
服もボロボロになっていて、あちらこちらに生傷。
「や、やぁ!ナルト君にの父だと言っても信じてもらえなくてね」
「ま、まぁ!ナルト!とっちめてしまったんですか!?」
「はぁー?!違うってばよ!!!俺に声かけてきた時にはもうボロだったって」
「そ、そうなのですか⋯あぁ!昼食すぐ作りますので手を洗って待っていて下さい⋯?」
バフっとナルトに抱きつかれ首をかしげながらも頭を撫でる。
ナルトのカバンからちらりと見えたのは人狼の歴史と言う本。
「⋯どうしましたか?」
「いいや⋯なんでもないってばよ⋯」
「まぁまぁ可愛らしいわ、うちの子は本当に」
サクモはふわりとその光景を見て微笑む。
がちゃんと、笑っているから。
本に、書物に自分のことがどう書かれているか、幼い頃に調べたことがある。
ダンゾウ様は稚拙で浮世離れした下らぬ戯言だと言っていた。その内容は酷く、意味を知れば知るほど、人狼という種族が、人ではない事を知った。
「⋯⋯ねーちゃん⋯」
「はい、なんでしょうか」
「⋯ねーちゃんは⋯⋯何でそんなふうににこにこしていられるんだってばよ」
真剣な目をして見つめる。ぎゅうっと、服をつかむのを見て眉が下がってしまう。
「人に⋯えぇ、人に助けられ、忍に愛され、人々に愛された事が忘れられないからです。」
ナルトは下唇を噛んで涙を堪えていた。
「私が愛している人々は、笑顔が素敵な方ばかりです、憧れているんですよ、笑顔が素敵な人に」
満足して頂けましたか?と聞けばナルトはぐしりとのエプロンで涙を拭いニッカリ笑う。
「でも、笑ってなくても俺はねーちゃん嫌わないってばよ!」
あぁ、それは知らないことだった。
人というのは笑顔しか頭になかった。
だから、人らしくするというのはにこやかにすべきなのだと思っていた。