第10章 狼と狐と。
とナルトが暮らす家は懐かしくて胸が締め付けられた。
それと同時にこの場所に自分のものがない、この場所は自分の場所ではない事に胸がざわりとした。
嫉妬、そう言ってしまえば簡単だ。
けれど、彼女が受け入れた、彼女がほんの少し望んだことでもある。
お茶を出されるが見慣れないマグカップ。
まるで他人の家のようで。
「どうかなさいましたか?」
「んーん」
「カカシ様、あの⋯お願いがあるのです」
ものすごく申し訳なさそうな顔をしていう婚約者さん。何故かそれさえ嬉しく感じてしまう。
この子はお願いなど殆どしないから。
にやけながら、言ってみてと言えば断腸の思いの様な顔をして告げた。
可笑しくて、愛おしくて、そんな思いをさせていることを、そんなことをお願いにさせていることが苦しくて、抱きしめた。
こんな事を言えばは当たり前な事だと説教をするだろう。
「い、いや、でした、か?」
「んー⋯嬉しいよ、頼ってくれて」
ふわりと髪を撫でられ心音が聞こえて、顔を上げると、にこにこと嬉しそうにしていた。あぁ、やっぱり護られているのは自分だと思ってしまう。
彼女が、笑っている笑顔なだけで、自分の心がちゃんと正しい方を冷静に見られる。
「、キスして」
そう言えば目を丸くしてピタリと髪をなでていた手が止まる。
「ひ、ふ」
間抜けな声を上げて真っ赤になる彼女。
「」
言い訳を探す彼女。
愛おしくて、もっとちゃんと、伝えて、もっとちゃんと、自分の色に染まってしまえばいい。
ちゅっとキス口付けると呼吸まで止まっているんじゃかいかと思わせるように固まる。
「婚約者さん、発情期にはすぐ俺を呼んでね 」
「!!!」
「オビトやイタチを傍に置いたら許さないんだからねぇ?」
はふと、疑問に思っていたことを口にしようとすると、今度は額にキスをされる。
「それじゃ、また後でね」
「あっ、カカシ様ー!」
その場を惜しげな顔を見せるから⋯。
「愛してるよ、俺の可愛い人狼さん」
真っ赤にしたまま口をぱくぱくさせているのを見て部屋を出た。
案の定イタチに会い、明日まで我慢出来ないのですかと聞かれ、うんと答え呆れさせていた。