第9章 愛痛い。
はたけカカシの婚約者。
その噂はカカシの目論見通りに瞬く間に里中に広まった。
その娘は人狼だとも。
そして、厄介な人達にまで噂は耳に入ってしまう。
深く深くため息をついていた。
サクモの様子を見て、は肩に羽織りをかけて、微笑みながら手紙をするりと抜き取る。
顔が、見れなかった。
「まぁ⋯!」
彼女はそんな声を上げていて、不意に表情を見る。泣いていた。
彼女の首にはこの間の温泉旅行で買って貰ったネックレス。ただの、なんの効果もないネックレスが首に下がっていた。
震える手、ただ、泣いていた。
ひどく責め立てるだけの文書、を蔑み、傷つけるだけの言葉が並べられていた。
暖かくなればなるほど、外は冷えて感じさせてしまう。
「まぁまぁ、あの子、あの子と暮らせるのですね!」
「⋯嬉しいかい?」
なんて意地悪な言葉だろう。
は目を丸くして言葉をつまらせ抱きしめてくる。
「⋯はい⋯っ⋯⋯」
嘘をつく娘。
解っている、解っていているんだ。
カカシと向き合おうと決めたこの子、カカシも向き合おうと決めた事。そして、愛してる事を。
「たった⋯たった⋯5年です⋯」
「⋯あぁ、そうだね⋯5年だ」
「サクモ⋯お願い⋯⋯カカシ様を⋯お願い致します⋯」
「ははっ、あの子僕と違ってそこまで何も出来ない子じゃない」
「違います⋯愛していてください」
当たり前なこと。子供を愛さないわけが無い、当たり前なことだった。
賢く聡い子だから。
「あぁ、解っているよ」
大粒の涙がポロポロと落として、拒むことを知らぬように受け入れた。
愛おしい哀れな娘。