第8章 婚約者。
ぎゆうっと痛いぐらいに抱きしめられて、抱きしめて、ハッとする。
「か、かかし、さま!何故か⋯部屋が⋯茶の間が⋯静まり返っています」
「⋯⋯壁に耳あり障子に目ありって事だね」
よいしょっと抱き上げられ、障子を思い切り開ける。
「ぐえっ」
「ふぐっ」
「ゆ、指、指なくなったかと⋯指!」
「おーい大丈夫かー?」
「リンは間一髪ね」
「おま、お前ら顔面スライサーみたいになってたぞ」
ゲラゲラと笑うアスマ。
障子は穴だらけ、壁に耳を当てていた2人はカカシの障子を開ける衝撃で顔面を強打したらしい。
「オビト、低い鼻が右曲がりだよ」
「てめぇ!!わざとだろ!」
「盗聴してた癖にキレるとか⋯リン、教育し直した方がいいよ」
「ふふ、オビトらしいでしょ?」
「バカ親だから」
「なによー!オビトはカッコイイのよ!」
「り、リン、よせって⋯」
騒がしい部屋、そろりと、下ろされてカカシを見上げると、にこり。
「婚約者さん、これが俺の仲間だよ」
「!俺は親友だ!」
「オビト、おまえとアスマはさっさと帰れ」
「はぁああああああ?」
「はぁ?なんで俺も」
はもじもじと、袖を弄っていると玄関の開く気配に、少し失礼しますと飛んでいく。
恥ずかしくて居た堪れなくて、何故か、むずむずした。
「サクモさん!お、おかえりなさい!お散歩ですか?」
「あ、あぁ⋯?具合でも悪いのかい?」
「へ?あら!」
サクモの後ろにはイタチが立っていた。
「まぁ!イタチさん!ご無沙汰しております」
「夜分に申し訳ありません、が婚約したと聞いたので⋯」
「こんな所で立ち話もあれだ、取り敢えず入ろう」
サクモの当然の言葉には茶の間を思い出しビクリとする。
イタチの腕を掴み、靴を引っ掛ける。
「あ!ちょちょっとと外に」
言いかけると、背後に気配がする。
「」
何故か振り返れない。
「ほら、イタチも父さんも冷えてるだろうから、家に上げてあげなよ」
ね?
と言われ頷く。
「それと⋯耳と尻尾」
つん、と尻尾を啄かれ驚き両手で尻尾を抱え振り返る。
「、逃がさないよ」
サクモさんとイタチは顔を背け肩を揺らす。私がそれはそれは情けない表情をしていたからだろう。