第8章 婚約者。
震えた手。
ただ、静かで。
庭の木々を揺らす音がやけに大きく聞こえた。
「あ、の⋯」
カカシ様の顔を見つめると顔を俯き深くため息をついていた。
「ぁ、の、カカシ⋯様⋯」
「俺のどこがよかったの?」
くぐもった様な小さな問。
「⋯⋯そ、それも言わなくてはならないのでしょうか⋯」
「⋯うん言わないとダーメ」
顔を見れないと解らない不安に襲われる。
「えっと⋯えっと」
首を傾けて覗き込むと、抱きしめられ驚く。
「か、か、カカシ、さま?」
「可愛い事しないの」
頼むから⋯と言われ行き場のない自分の手を見てそっと、カカシ様の背中に触れる。
カカシ様の膝の上に座りながらそっと抱きつく。
それだけで、震えも、不安も消えていた。
「⋯⋯初めて貴方を知ったのは暗部でですね、カカシ様は私を犬のように扱い可愛がってくれましたね⋯ダンゾウ様以外触れられるのが嫌だったのですが、人間に興味を持ったのは貴方がきっかけなのですよ。」
教養を人殺ししかされていなく、自分の名前さえ書けず、イタチさんにそれから教わり、本を読みなさいと言われ色々な本を読んだ。
そして、ただひとつ。
恋と愛だけがわからなかった。
沢山の人に聞き回っても自分で考えなさいと言われ、もやもやしていた時。
私は再会した貴方に恋愛をしようと決めたの。
家にと、案内される時、私は躓いて転びそうになると、腕を掴んで「危ないでしょ」って言ってくれたんです。
その時はとてもとても驚いたんですよ。
私が転ぶ事を心配した表情と言葉、私なんかが転んでも躓いても誰も助けたりなんか心配なんかしなかった。
どれだけ、驚いたか、どれだけ嬉しかったか。
きっと、その時に恋をしたんです。
「⋯⋯恋をしてしまったんです⋯」
グスリと聞こえ、ぎゅっと抱きしめる。
「⋯⋯⋯⋯カカシ様⋯好きでいて⋯ください⋯私⋯頑張りますから」
「それはこっちのセリフだよ⋯」
私も、あなたも。
怖い。
互いを失う事が、置いて消えることが。
怖い。