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【戦国BASARA】闇色夢綺譚 ※R18

第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~


【解けた結び目】






名前、元気か?
今何している?
また縁側で茶でもしているのか?
それとも鯉に餌をやっていたりするのか?
また、庭で走って転んでいたりするのだろうか。
大きな傷は作るなよ、女の子なんだから。
あとは、病にかかっていないか?
三成様に苛められていないか?
物凄く心配だ。
俺は今、三成様の命で佐和山城から少し離れた所で山賊退治に赴いている。もう、何日も名前に逢っていないな。
名前、俺は今、アンタに逢いたい…。
逢って抱きしめたい。
出来る事ならアンタを手元に置きたい。
ずっと傍に居たい。
だが、どうやっても届かない。
アンタを狙っている人達には到底たどり着かない。俺には勝てる自信ねぇ。
どんなにイカサマやったってこの人達じゃ、敵わない。
どんなに身体を重ねても、心を繋ぎ止める事が出来ても、直ぐにこの人達がアンタをかっさらって行ってしまう。
今の俺では一生適うはずがない…。


なぁ、名前、

もし、俺がこの人達の立つ頂きまで上り詰める事が出来たのなら、俺が名前に手を差し伸べたら、

君は俺の手を選んでくれますか。


なんて、夢は夢のまま。

名前、束の間の夢をありがとう。


君の願いが叶う事を祈っている。


島左近









「清興、ありがとう…」

彼からの最初で最期の手紙。
なんとなく、別れの手紙なんだなと思った。
次から彼と逢っても、今までとは同じにはならない、優しいキスも甘い言葉も温もりも、何もかもがなくなると思うと胸がキュッとなって酷く切ない。
胸に穴が開くとはこう言う事なのだなと改めて身に沁みた。


「清、興…好きでした…」


直接呼べなかった名前。
もう、呼ぶ事のない、彼の名前。
そして、伝えられなかった想い。
もしかしたら、これで良かったのだと思う。
私はいつか帰らなくてはならない日が来るから…。


私は空を見上げ、最後に彼を想い、静かに涙を流した。









(ほどけた蝶々結び。この恋は実る事のない淡い幻…。)
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