第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
【穏やかな調べ】
「申し訳、御座いません…でした…」
私の投げた物が石田様の顔面に直撃させ、美しいお顔に傷を付けたのは私です…。
私は涙目になりながら石田様の傷口を清潔な布であてがい、二つの理由で震えながら手当てをしている。
一つは傷の事。もう一つは石田様のお顔に触れている事。
そして、その間に何度謝った事だろうか。
その度に石田様は大丈夫だ、平気だ、問題ない、と嫌な顔をせずに答えてくれるが、私の心臓は大丈夫でも、平気でもない、問題大ありだ。
そして何となく私が震えている理由を察知した彼が後ろで声を殺して絶えず笑い転げていた。
ちくしょ。覚えていろよ。
「わ、私、殺されたり、するの、でしょうか…」
石田三成イコール斬滅。と言う事はつまりは死ぬって事よね…。
震えながら石田様に問うと、澄んだ瞳が開かれる。
「…何故、そうなる…。」
問題ないと言ったではないか。と石田様は仰る。
「で、ですが…私めは石田様に御無礼を…」
石田様は渋い顔をし、暫く無言でいると、ゆっくり言葉を紡いだ。
「そうだな…。では…」
私の事は名前で呼べ。
「え…」
今、何と…。
「拒否は認めない」
な、名前!?ンなの無理に決まっているわ!
前回も言われたが、無理があるだろう。
私はそこらにいる様な只の一般人。
城の主を名前で呼べる筈がない。
「ご、ご、後生に御座、います…」
「では、今直ぐにでもその首を叩き切っても「あわわわわっ!」…」
私は分かりました、と言い、心の準備をする。
たかが名前だ。大丈夫だ。心配ない。向こうにいる時は彼の事ハシビロコウって言っていたではないか。余裕だろうと自分に言い聞かせる。
名前、推して参る!
「み、みみ、みちゅなり、さ…ま」
「「……………………………」」
「あ…………………」
あぁ、\(^o^)/オワタ。
「ぶはっ!!!ひーっ!!!」
ドンドンっ!ひぃっ!!!
島左近が畳を叩きながら噛んだ、噛んだよ、と涙を流しながら大笑い。
「っく…っっくっっ…」
石田様は丁度orzの恰好で笑いを堪えようと必死で震えていた。
貴重だけど、何か違う…。
私は久々に某甘党侍の様に、死んだ魚の目になっている。
社会的制裁ってこう言う事なのかな。