第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
水が滴る音が湯殿に響き渡る。
ついさっき抱きしめ合っていた石田様の体温がまだ残っているようだ。
湯船に浸かりながら今日の事を考えると逆上せた様に顔が熱くなる。
「ひゃあぁぁぁっ!」
湯船の水面をバシャバシャと叩いて悶えていたが、その後の事…あの事も思い出してしまう。
「猿飛…佐助」
アイツは、嫌いだ。大嫌いだ。
そして、アレの感覚が私の全身を支配したのだ。
むしゃくしゃしながら湯船から出て脱衣所へ向かう。
身体を布で拭っていると胸元に内出血を見付けた。
「あれ、私何処かにぶつけ…」
え、あ、あれ?
こんな所どうやったらぶつけられるのか。
もう一度、その内出血を見てみると胸から下にかけて幾つも付いていた。
「これって、まさか…」
キスマーク、だよね…
「ひゃあぁぁぁっ…ぐっ」
慌てて口を抑え、悲鳴を殺す。
こんな所で大声出して誰か来たら非常にマズイ…。何故なら私は裸。そして、このキスマーク。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイよっ!思わず出〇さんみたいな口調になってしまうのは仕方ない。つか、つけ過ぎだっての!何これ!見えないからってコレはないでしょ!逆に引くわ!
消えろ!消えてしまえ!なくなれ!
そんな事を思っていた時だ。
「どうしたぁっ!!!」
ガラッ!
大声と共に、扉が開いた。
「あ…ぁ」
「あ…」
咄嗟に大事な所は隠せたが、暫く私と彼、島左近は固まったまま動かなかった。
「おぉぅ、良い眺め…」
「き、き、き…」
徐々に顔が赤くなる。
その時、また声が響いた。
「いえやすぅぅぅぅっっっ!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁっっ!!」
ガコーンッッッ!!!
「ぐはぁっっ!!」
「「ぴゃああぁぁぁぁぁぁっっ!」」
この時、胸の華が跡形もなく消えていた事に私は全く気付かなかった。
(最後の方、セリフだけ)