第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
【幸せの道標】
「ごほっ!ゲホっっ!!」
私は何をやっているのだろう。
好きでも何でもない人のを…。
口の中が気持ち悪い…。
「あ、そうだ。名前ちゃん」
彼が支度をしながら私を呼ぶ。
私は返事の代わりに彼を睨み付けた。
彼は両手を上げ、おー、こわっ、とおちゃらけて言葉を続ける。
「名前ちゃんが凶王の所に居る事は毛利の旦那には内緒にしといてあげるよ」
どうせ、凶王さんも自ら手放す訳ないし。
彼は良く喋る。
今の私には彼の声が、姿が、全てが鬱陶しい。
「だから」
彼が近付いて来てまた耳元へと唇を寄せる。そして、一言呟いた。
じゃ、宜しくねー。名前ちゃん、と軽い挨拶をして去って行った。
巫山戯んなよ…。
" また、相手してよ "