第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
【秘すれば、花】
"俺、アンタに名前、教えてないぜ…"
ヤバイ…誤魔化さなくちゃ…
「っ、先程、石田様が…」
声が掠れる。落ち着かなくては。
引戸が開かれ彼が入って来る。
「あの後、俺は三成様と一緒にいた」
そして、アンタと三成様が二人でいる時も、俺の名前は出なかったし、三成様は俺の事を左近と呼ぶ。
「そ、れは…」
石田三成に事前に聞かされていた、と言うのもおかしい話なのだ。昨日まで彼とは最悪な関係だったし、それにわざわざ島左近を紹介するとは彼の性格上有り得ない。
冷たい視線で私に凄む。昨日の石田様の様に、突き刺さるようにコワイ…。
でも、今はそんな事よりどう隠すかだ。だが、どんどんと近付く彼に焦りを感じ、まともに言葉を発する事が出来ない。
どうしたら良いと思っていたその時、後頭部と背中に強い痛みが走る。
「っあっ!!!」
畳に身体を打ち付ける鈍い音が辺りに響いたのだ。
私は彼に思い切り地に縫いつけられていた。
打ちどころが悪かったせいか、一瞬呼吸が止まった。
「ごほっ!ゴホッ!」
むせながらも恐る恐る目を開けて見ると目の前に彼の顔があった。
彼の鋭い視線と赤と金の瞳が私を貫く。
「そう、この匂いだ…」
この匂いで三成様、それに刑部さんまでも…。
「アンタは何者なんだ!」
だ、ダメ…でも…
「っ…!わ、わたしは…」