第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
島左近…。
彼は私の異常に気付いている。異世界人とは気付いていないが、私の異常なこの匂いに気付いた。
トリップの影響と言って良いのだろうか、この匂いのせいで何度もあんなコトとか、そんなコトまで…。
「ぴゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
かぁっと顔が熱くなる。
ホントいらない能力だな、おいっ!
此処に飛ばした奴に言いたいよ。もっとマシな能力置いていけって!例えば属性全部とか、最強設定とかさ!
って、
「全部死亡フラグじゃねーか!」
戦いたくもないし、逆ハーとか嫌われとかね、そんなのいらないんだよ。良いから元の世界へと帰して欲しい。
切実に。
ホント、この世界の人達は私をどうしたいの?連れて来る意味分かんないし、理解もしたくない。
完全にキャパオーバーだ。
はぁ…。
彼らから頂いた包を見ながらため息をつく。
中を覗くと眩しい位に煌びやかだ。
「私には、勿体無いよ…」
昨日着ていた着物も美しいがこちらも負けず劣らず。
また、薄紫色だ。豊臣は紫好きだな、と思って着物を物色する。
「あ、」
何か可愛いと思い、数ある中から一枚取り出した。
やはり薄紫で白と少し濃い紫のラインが美しい。そして裾に広がる若草色の葉と白い小花が綿花の様にふわり、と柔らかい感じだ。
コレ、着ようかな、と思っていると襖の向こうに先程と同じ気配がした。今度は一人だ。
この気配は確か…
「し、ま…様?」
私は襖に向かってその人物に話しかけた。
「…アンタ本当に何者なんだ…」
暫く間が開くと島左近は私が呼んだ名前に反応したんだ。
「俺ってこう見えても気配消すの上手いんだぜ?」
あ、やらかした。
「それに俺、アンタに」
名前、教えてないぜ…