第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
目が覚めたら自分の部屋だった。
自分の部屋と言っても宛がわれた部屋。
これが夢で次に目が覚めた時には自分の部屋で美味しいコーヒーを淹れて今度こそ本当に笑い話にするんだ。
だけど…何度寝ても、起きても真っ先に見えるのは知らない天井。
今となってはその天井も当たり前になって来ているから嫌になる。
あぁ、夢と言えば、つい先程まで見ていた様な気がしたのだが、やはり夢は夢。ちっとも思い出せない。
そんな事を思いながら首を傾げていると、急に耳鳴りがした。
「っ…!?」
その耳鳴りはほんの一瞬で消え去ったのだが、私の頭の中に一つの映像が映し出されていた。
だけどもその映像も朧気で、昔の映画のフィルムのように断片的で良く解らなかった。
ただ、一つだけ頭の中に残された映像があった。
私が白い花を握り締めている、そんな映像が。
これは、今朝見たかも知れない夢の断片?
「解らない…」
まぁ、良いか。
さて、元就様や女中のねぇ様方にどやされない様に、支度でもしよう。
この時の私はトリップも何もかも"ゆめ"の世界が作り上げた、そう一括りにしていた。
此処に来た時と同じ様に、ある日突然向こうにいるとそう信じていた。
だけど、私が見た夢がこの後大きく関わって来る事になるなんて知る由も無かった。
私の運命が、
私の全てが、
私のせいで、
此処から本当の私の物語が始まる…。