第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
「しっかりしろ!」
その瞬間、私を包んだのはあの人ではなくて、今現在私の目の前にいる人、銀色の月だった。
「んっ!!」
呼吸が止まる。
時間が止まる。
私は彼に、唇を塞がれていた。
それに気付いたのは呼吸が止まってからの事。
私は酸素を求め口を開く。
「っ、はぁっ」
その一瞬の間、視界が遠のき私の目の前には月が写っていたんだ。
「は、っんっ!!」
本当に一瞬の出来事だった。
私は彼に押し倒され、再び唇と呼吸を奪われる。
再び酸素を求め唇を開くと暖かく、ぬるりとしたモノが差し込まれた。
「んっ!」
頭の中が銀色で埋め尽くされる。
恐怖やら、拒絶などは全てこの色に飲み込まれた。
イヤらしく、お互いの舌が絡み付き、自然と艶のある声が漏れる。
「ふ…っ…んっ」
彼の手が乱れてきた長襦袢の合わせに沿うようにゆっくりと降りて来ると彼が触れている場所がじわりと熱くなる。
あ…わ、わたし…
このままだと、と思っていると彼は素早く私の長襦袢の合わせを整え、脱兎の如く去ってしまった。
…………。
私は呆気に取られ、彼が出ていった襖を暫くみつめていると先程の事を思い出したせいか、徐々に顔に熱が帯びて行くのが分かった。
「え、う、うわー…」
あの石田三成とキスしちゃった…。
そのせいで恐怖やら何やらも記憶から飛んだ事については怪我の功名って事にしよう。
「って違うでしょ!」